「世界一やさしいフリーランスの教科書 1年生」を読んでの感想。新社会人全員にもぜひ読んでほしい。

書評

2004年からイラストレーターのフリーランス(後に漫画家も追加)として活躍されている、高田ゲンキ氏の新著、「世界一やさしいフリーランスの教科書 1年生」を読んだ。

フリーランスになる際に、気を付けること。すなわち、心構えや、仕事道具、必要アプリ、行政手続き(開業、年金、保険、確定申告など)については、一応、個人ブログや、エージェント系のサイトで、あらかた調べたので、本は必要ない、と思っていたが、

・アマゾンのレビューが高評価だったこと

・開業した後の人間でも、参考になる点が多い、と口コミに書かれていたこと

・ブログは情報が分散しているので、確認したい時、面倒なこと

以上3点から、一冊、フリーランス初心者向けの書籍が手元にあった方が良いかと思い、購入した。

結論からいうと、これは「買い」だった。また、フリーランスを目指す人は勿論だが、これから社会人になる若者全員に、ぜひ読んでもらいたいと思った。これ1冊の内容を頭に入れておけば、

・最低限のビジネスマナー

・仕事における細かいルール

・事業全体の大まかな流れ

・多様な働き方への選択肢

についての知識が概ね手に入ると思う。

それは、会社で働き続ける上でも役に立つし、独立する際も、心強い支えになると思う。

さて、新社会人については、上記の通り役立つ内容として、私のように、これからフリーランスを目指す人間に対してはどうだったか、というと、

内容の半分くらいは、社会人経験がそれなりにあり、私のように、事前にネットで調べまくった人にとっては、それほど真新しい情報ではなかった。

たとえば、フリーランスとして働くことのメリットや、仕事の取り方(営業、SNSマーケ)、仕事の進め方(打ち合わせなど)の注意点などである。

とはいえ、分かりやすく、体系的にまとめられているので、十分今後役立つ内容だった。

それに、逆にいえば、結構ネットで調べまくった私にとっても、半分くらいは、「これは読めてよかった」と思える情報があり、やはり書籍は重要だと改めて感じた。以下、そのような、自分にとって「当たり」だった部分をまとめておく。

①フリーランスは、失敗がキャリアに影響されにくい

これは、確かに・・・とうならされた。フリーランスでは、大きな失敗をしても、大抵は「そのクライアントから二度と仕事を受けられなくなる」くらいで済み、反省し、もっと良い条件で仕事ができる相手を探せば良いとのこと。逆に、会社員は、一度大きな失態をしでかしすと、それがずっと昇進や人事に影響を及ぼす可能性があるとのこと。まさしくその通り。

これは会社によると思うが、少なくとも私のいた会社では、大きなミス=死であった。社長にそのようにインプリンティングされれば、もうその先はバッドエンドしかない。だから、誰もが失敗を恐れ、上に伺いを立てながら、仕事するようになってしまっていた。

この辺の内容は膨らませると面白そうなので、また別記事で書きたいと思う。

②好きなことより、得意なことを仕事にしよう

これは良く聞く話なのだが、「やっぱそうだよなー」と改めて感じた。なぜなら、好きかどうかは主観的な基準だが、得意かどうかは「第三者からの基準」であるとのこと。おっしゃる通り。

商品を売れるか、そのスキルが売り物になるか、はあくまで、第三者からの評価のみ。どれだけ好きかは、当たり前だが関係ない。分かっているけど、自分だけだと、中々気づけないことだ。で、得意なことはどうやって見るければ良いのか、というと、「他人によく褒められること」、それでいて、「やっていて苦でないこと」を見つけると良い、とのこと。なるほど。

私の場合、分析やリサーチ、提案がよく褒められたし、苦でもないので、やはりマーケティングは向いてそうだ。安心。

③目指す業界の先輩フリーランスが、どうやって稼いでるか調査すべし

同業界のフリーランスのサイトやTwitterは、ある程度調べていたが、「どうやって仕事を得ているか」「どうやって稼いでるか」という視点には力を入れてなかったので、盲点だった。改めて調べてみよう。

④最初から理想の案件はもらえないので、とりあえず色々な仕事をやってみるべき

これも当たり前のようで、難しい話。私の場合、今までのキャリアでは、健康食品関連の知識が多いのだが、正直、もうやりたくないので、健康食品関連の仕事であれば、断ろうかと思っていた。だが、最初からやりたい案件が来るという考えは、三温糖のように甘いと突きつけられた。そのから膨らむ話もあるし、とりあえずやってみることが大事だろう。

⑤自分にしかない強みを掛け算でつくる

これも良く見た情報であるが、きちんと整理してなかったので、改めて考えてみる。

私の場合、

・リスティング広告の運用ができる

・インハウスで行った経験がある

・Photoshop、illustratorで簡単なデザイン、バナー制作ができる

・HTML、CSSを多少分かる

・薬事法、景表法、健康増進法に関する知識がある

・通販のビジネスモデル知識、管理者を10年以上やった実績がある

などかな?

プライベート面の強みも合わせた方がいいらしいが、正直趣味があまりない・・・

あえていえば、

・漫画に詳しい

・節約術に詳しい

・プロテニスに詳しい

あたりかな?

確かに、WEBマーケティング×テニス、とかは、どこかで需要が出るかも。何事も、とりあえず、書きだしてみるのが大事ですな。

⑥ポートフォリオに価格表は入れるべきでない

私はイラストレーターではないので、ポートフォリオを作るかは分からないが、仕事の価格表は、ある程度、サイトに入れた方が良いのでは、と考えてた。実際、広告運用のインハウス支援会社を探した時も、価格がサイトに書かれていないので、躊躇した経験があるからだ。価格が書かれてないと、上司への相談もしずらいので、書いてあった方が、新規の入り口が広がると思った。

しかし、著者いわく、

「料金が書かれてなくても、商品やスキルに魅力を感じたら、必ず問い合わせが来る」

とのことで、さらに、

「問い合わせしてこないのは、結局、質よりも値段を優先するクライアントなので、関わってもいい仕事はできない」

とのこと。確かに・・・。

私が以前いた会社も、結局、上の人間は価格でしか仕事をみない人たちだった。担当者がどれだけ「質」を重視しようとしても、結局、会社組織というのは、上役、ひいてはトップの考えが全てである。そのような会社とは、むしろ仕事しない方がいい、という選択も確かにある。勉強になった。

⑦営業とは、評価を仰ぐのではなく、自分を必要としている人を探すアドベンチャー

著者いわく、駆け出し初日の営業では、「なんだこれは。君はイラストレーターに向いてない」とコテンパンに言われたとのこと。私はこんなこと言われたら、3日は酒に逃げる自信がある。

だが、同じ日に2件、別アポがあったが、そちらでは、「いいですね!」と絶賛され、仕事も受けられたとのこと。だからこそ、営業は「数打つ」ことが大事だし、一人一人に評価に落ち込むべきでないとのことだ。私もこれから、そういうことが何度もあると思うので、心に刻んでおきたい。

⑧SlackやChatworkのやり取りは、証拠にならない

これは全くしらなかった。自分の方から投稿内容を編集できるので、証拠能力はなく、できれば、適当な所で、マーケティング確認メールのやり取りをしておいた方が良い、とのこと。正直、これだけでも本書を買った意味はあったと思った。

⑨フリーランス協会に入ると損害賠償請求保険がある

何となく名前は知ってたが、損害賠償請求に対する備え、その他メリット、会費などは知らなかったので、役に立った。私も会社員時代は、フリーの方に依頼する側だったが、時折、ビビられたのが、「損害賠償請求」についてだ。

特に通販事業は、「個人情報」を扱うことが多いので、フリーの立場からすれば、その辺にできれば関わりたくない、というのも良く分かる。

具体的には、サーバーの管理などで、私が退職することになり、後継ぎがいないので、これまで頼んでいたフリーの人に頼んだのだが、たとえアカウント権限で切り分けされても、「個人情報が入ったサーバーを管理するのは嫌」と言われてしまった。(もっと遠回しな言い方だったが)

私も同じ立場になると、猶更分かるが、とくに安い報酬で、そんな仕事はしたくない。万が一の賠償請求が怖すぎる。メリットが少ない。

そんなフリーランスに向けて、入会すれば最大10億円の賠償責任保証が自動的につくそうだ。会費も年間1万円。細かい条件も見てからだが、ぜひ入っておこうと思う。

以上、これら9つの内容が、特に「買ってよかった」と思った部分である。

これ以外にも、契約書のチェックポイントや、確定申告の詳細な流れなど、役立つ情報は満載なので、まさにフリーランス一年生にとっては、必読書だと思う。

それなりにネットで調べた、と思った人でも、新たな発見がきっとあると思うので、ぜひ読んでみてほしい。

なお、本著には書かれてなかったが、社会人として雇用保険に加入していた人は、フリーランスとして開業するにあたり、「再就職手当」を受け取ることができる。ある程度の給料をもらっていれば、50万円くらいになるはず。この点も手続きも重要なので、細かいことはネットで調べておこう。その点と本著を合わせれば、まさに完璧。準備万端なスタートになるだろう。