健康食品の体験談を信用してはいけない理由。14年、健康食品の会社にいた経験から、全部書く。

人生観・仕事観

最近、肝パワーなんたら、という健康食品について、体験談を捏造した記事広告を使っていた、ということから、代理店や広告主の人が逮捕されて、話題になりました。(特にアフィリエイターの間で)

これについて、

  • 捏造するなんてダメに決まってるだろ
  • 根拠のない内容を書くなんて、プロじゃない

と、批判するのは、だれでもできる簡単なことなのですが、そこには結構、根深い問題があるので、思うところを書いてみます。

ちなみに、結論からいうと、私は、

健康食品の体験談は、全て信用してはいけない

と思ってます。

また、

プロティンなど、「五大栄養素を効率よく摂取する」タイプを除いて、健康食品は存在自体、必要ない、とも考えてます。

14年、健康食品を宣伝する立場にいて、何言ってんだと言われるかもしれませんが、これが結論です。

健康食品の体験談は、そもそも「改変」が宿命づけられてる

通常、商品を買うときは、レビューや、お客様の声を参考にしますね。

そこにウソが書かれていたり、改変したら、ダメですね。ふつう。

ですが、健康食品の場合、「生の声をそのまま載せる」のは、事実上不可能です。

なぜなら、効果効能を示唆として、薬機法(旧:薬事法)違反になるからです。

効果、効能をつたえてよいのは、医薬品だけ、と決められています。

※機能性表示、トクホなど、一部の効能をつたえてよい、保健機能食品の例は、ここでは省きます。

「〇〇を飲んだら、肝臓の数値が改善しました!もう一生、飲み続けます!」

会社に届く、お客様の「良い声」は、こんなのばかりです。

ですが、それをそのまま載せるとアウトになります。

なら、どうするか。「改変」です。

法的に問題ない内容で、さらに、事実を変えない内容に、リライトするんです。

ここの匙加減で、プロの腕が問われるのですが、

多分、まじめな人ほど、心が病んでいくと思われます。

たとえば、

「肝機能の数値が改善しました!」

勿論、これはダメですね。

では、

「健康診断が良い結果になりました!」

これは、どうでしょう。

まだ駄目ですね。

体に対して、平常時よりプラスになったと、効果、効能を示唆してます。

ちょっと、横道にそれますが、

効果、効能というのは、ようするに、

マイナスの状態を平常にしたり、

平常の状態をプラスにすることを、意味します。

病気が治る、というのは、マイナスから平常。

バストが大きくなる、とかは、平常からプラス。ですね。

こういった表現は、薬しか許されません。

なので、平常→平常。つまり、「健康維持」しかダメなんです。

これが基本です。

さっきの例でいえば、

「毎年の健康診断が、楽しみです!」

なら、良いですね。

「毎年」「楽しみ」と書いてるだけです。

飲んで変化したとは読み取れませんし、普段、ダイエットしてて、体重が減るのが楽しみなだけかもしれません。

あまりにもホワイトすぎると、ユーザーに響かない。ブラック寄りにすると、違法になる。

健康食品の体験談というのは、

このような、法の目を潜り抜けるリライトの繰り返しです。

なので、レベルが違うので失礼ですが、法律系の仕事に近いと思ってます。

他の商材の広告でも、法律は避けて通れませんが、健康食品は特に顕著です。

こういう言葉遊びに、快感を感じる人(実際いました)以外には、お勧めしません。

つまり、「改変が前提」となってるので、信用しない。これが理由の一つです。

知り合い、知人の体験談ばかりだから

次に信用しない理由が、健康食品の体験談の多くが、「知り合い、知人」のものだからです。

ひどい所だと、社員の意見をそのまま使ってます。

そんなのバイアスかかりまくりで、参考になるわけがありません。

勿論、これはいけないことなのですが、そもそも、さきほど書いたように、

健康食品は改変が宿命づけられてる、というのも、遠因になってます。

「どうせ改変するなら、最初から知り合いでえーやん」

というやつです。

これは、許されるかはともかく、人間の心理として生まれてくるのは、仕方ないと思います。

知り合いとまではいかなくても、「熱狂的なファン」、いわゆる信者の意見をセレクトして使うのは、多分、どこもやってるでしょう。

これも、参考になるわけないですね。

また、信者というのは、アンチと表裏一体の所があり、一般人をホイホイ使うのは、リスクと隣り合わせです。

私も、「〇〇商品名大好きです!命を救われたと思ってます!一生続けます!」とか、書かれたアンケートが届いた時は、

嬉しさよりも、引きの方が、正直強かったです。

こういう方は、なにかあると、全く逆の立場になり、健康食品の場合、それが非常に起きやすいです。

体調の変化とか、色々な要因がありすぎるので。

なので、最初から、問題の起きにくい知人を使う、という面もあると思います。

そもそも、体験談は根拠がないのが当たり前

今回の事件で、「根拠のない体験談はNG」と説明してる人がいましたが、私は正直、クエスチョンですね。

そもそも、健康食品の体験談に、根拠なんてないですから。

一人に効いたからといって、別の人に効くとは限りません。

根拠を求めるのは、薬機法ではなく、健康増進法や、景表法なのですが、詳細は省くとして。

ここで必要な根拠というのは、エビデンス(医学的根拠)というレベルです。

そんなもの、体験談にあるわけないです。

あったら、薬になってます。

なので、役所から合理的根拠を出せ、といわれたら、99%の会社は出せません。出せた会社いるんですかね?当時は、なかった気がするのですが・・・

こういったロジックは、専門的なことは知らなくても、一般人も体感として知ってるのではないでしょうか。

「健康食品の体験談なんて、信じる方がバカ」

とね。

その通りですよ。

でも、「もしかしたら、ホントかも」「なんか良さそう」くらいは、なにかしら、健康に問題を抱えていたら、信じたくなるものです。

バカ、と断じる人は、おそらく、自身の健康に不安を抱えたことがない人です。

ちなみに、一人の体験談では、根拠がないのは、当たり前ということから

昔は、※個人の感想です

という一言(打消し表示といいます)があれば、ギリOKみたいな「空気」がありましたが、

現在はガイドラインも作成され、明確にアウトになってます。まだ知らない人も、結構いますが。

正確には、誰がみても目立つように書けば良いですが、イコール根拠がなくてもOKではないので、一般の人は、「但し書きをすれば良いは間違い」と覚えて、相違ないと思います。

そもそも、健康食品は必要なのか

最後に。

サプリメント大国、アメリカをはじめ、世界中で健康食品は利用されてます。

日本人も、全体の半分くらいは、健康食品を使ってます。

超巨大な産業です。

なので、それに従事する人は、必要性を訴えますが、私は正直、要らないんじゃないかと思ってます。

アスリートや、食品という形で利用できない人が、「効率よく栄養素を補給する」健康食品は、あってよいと思います。

それは、あくまで、道のりの短縮だからです。

しかし、健康数値を改善したり、ましてや、病気の改善を目的(それを表現していなくても)

とするのは、きちんと厳しい承認プロセスを経た、薬だけで良いのではないか、と思います。

誤解ないようにいうと、サプリメントの会社は、インチキな商品を作ってる、と否定したいわけではありません。

むしろ、まじめに研究して、作ってる会社も沢山あります。私がいた会社もそうでした。

しかし、それを宣伝できない。法律がおかしい!

と、声高に文句を言う経営者は少なくないですが、

法律がおかしいのではなく、「存在がおかしい」んです。

そもそも、そんな立ち位置のもので、素人がビジネスできる、という現状がダメなんです。

真面目にやってることと、法律が許すか、ユーザーが許すか、は、残念ながら関係ありません。

健康食品は、九州の某企業のように、単品通販で急成長した企業が多い商材です。

利益を圧迫するのは、ほとんど販管費(広告宣伝費)で、製造原価が低く、通販ビジネスも相性が良いことが、理由の一つです。

なので、中小企業がビジネスとして、手をだしやすいのは分かりますが、本来そうすべき対象ではない、非常に難儀な存在だということは、今回の事件を機に、もっと広く知られて良い、と思います。

少しでも、誰かの理解につながれば、幸いです。

では。