今回、職を辞するに当たり、色々な人の意見をみてきた。
その中で、特に考えさせられたのは、「転職は悪」という日本に古くから根付いた思想についてである。
自身で退職活動を進めるにあたり、このテーマに対する、ネットと、リアル社会における温度差を、痛いほど感じた。
近年、ネットでは、「転職は悪ではない」という意見が増えている。主流と言っても良い。
先日、日経やどこかのニュースでも、まさにタイトル通りの「転職は悪ではない」という記事が掲載されていた。
さらに、facebookやtwitter、noteでは、30~40代の若き経営者たちが、「転職は悪ではない」「むしろ良いことである」という、意識高い発言を繰り返し、発信している。
こういった環境に囲まれると、自身でも、「そうだよ。悪いことじゃないよ」と考えに感化されていくが、現実として、リアルではまだまだ、そこまで物分かりの良い人達が多いわけではない。
特に田舎の中小企業では、皆無といってもいいだろう。
中には、気持ちよく送り出す、応援する、と言ってくれる人もいるが、正直、仕事上の関係の薄い人か、自身も退職が近づいている人が殆どだ。
直接、仕事にかかわっている人間や経営者は、どう見ても、笑顔で送り出す、という心境には至っていない。無理をしている。だから、辞める側も、結局申し訳ない、という気持ちにならざるを得ない。つまり、「転職は悪」という考えのまま、ということになる。
だが、自分に置き変えれば気持ちは分かる。
「アメリカじゃ普通のこと!」「日本は遅れてただけ!」と言われても、現実として、今までは終身雇用、年功序列の制度で、ずっとやってきていたのだ。
これから未来を背負っていく若き経営者と違い、もう一時代を築き、あとは10年くらい勤めれば会社人生も終了、というような古い経営者は、そんな簡単に考えを切り替えることは難しいだろう。
これまでは、転職をしたら二度と帰ってこない、会社に貢献してくれることもない、そんな経験しかしていなかったのだから。
逆にIT関連を中心とした若い経営者は、たとえ会社を離れても、外部から支え合ったり、仕事で連携したり、という経験を重ねてきている。だから、笑顔で送り出すことができるのだ。
なんだか、長々と書いてしまったが、要するに、「転職は悪か、そうでないか」という考えについては、今までの人生における「転職」についての成功体験が大きく関わってくる、というのが、私の実感である。
私自身、仕事を辞めるので、「転職は悪」といわれると、とてもつらいものがある。
ただそれでも、SNSなどを中心に、「転職は悪じゃないよね」「悪と言っている経営者はクソ」「なんで転職が悪なるのか全く分からない」という意見で埋め尽くされるも、なんだか一方的だな、と感じた次第である。
田舎の中小企業の社長なんて、あんまりSNSやってないからね。
できれば、どちらの意見もそれぞれ目立ち、若者には両方の立場の考え方にも触れて欲しい、そう思った。
まぁ辞める側としては、悪と思われようが、善と思われようが、ぶっちゃけどっちでもいいけどね。
雑音は気にせず、自分で決めた道を進むだけである。