自動シャンプー台(オートシャンプー)というのを、ご存じだろうか。
私はもう20年近く、いきつけの理髪店か、1000円カットの店しか利用しておらず、そこには設備がなかったので、知らなかった。
シャンプーで髪を洗う工程を、全て自動でやってくれる、すぐれものらしい。
こういう奴だ。
本日、いつもの散髪屋のオヤジに髪を切ってもらっていると、この機械を導入しようか迷っていると、相談された。
専門家の意見を聞きたいとのこと。
私はWEBマーケティングをしているとは言ったが、理髪店のコンサルをしてます、といった覚えはないのだが・・・。
おそらく、コンサルティング的な仕事をしている人は、みな同じに思えるのだろう。
適切な助言が出来るとは思えないが、長年世話になっているオヤジなので、少しは力になれるかもしれないと、
「詳しく聞こうか」
と続きを促した。
金額は設置料を含めて120万円ほどらしい。
ユーザにメリットがあるのか、話を聞く限りでは、よく分からなかったので、(むしろ、こういう家族経営の理髪店には、手作業での洗髪を期待してると思う)
これは店側の効率化と、費用対効果だけで考えた方がよさそうだな、と思い、
そこで「ん?」と思考がとまった。
気になったので聞いてみた。
「自動マシーン入れたら、そんなに効率化になるんですか?」
「私の洗髪、いつも1分くらいで終わっているから、そんなに変わらない(むしろ時間がかかる)ような気がするんですけど」
と。
するとオヤジは、
「これだから素人は・・・」ヤレヤレ
みたいな表情をし、
「あなたみたいに、洗髪が楽な客ばかりじゃないんですよ」、と語り始めた。
どうでもいいが、オヤジ。他の客もいるぞ。
「そもそも、最初に洗髪しないとダメな客も多いですから」
「?どういうこと?」
「髪を固めてたら、当然むりですし。あとね、何日も髪を洗ってない人とかね。ひどいもんですよ」
おい、オヤジ。客。
「そりゃ私もプロですから、やりますけどね。本音でいえば、洗ってから店来てほしいのが、正直な所ですよ」
ずいぶん、口の軽いプロだな。
「あとは、注文の細かい客とか。髪の量が多い人は、それだけ時間がかかるし。短髪で整髪料をつけてない、さぼてんさんなんて、全然参考になりません」
回転率あげる良客に、なんて言い草だ。
「なんで、全部自動で出来るなら、かなり楽なんですよ。分かってもらえましたか?」
分かったぞ。120万の機械が必要かは分からなかったが、オヤジの心の内はな。
結局、その後も、話は続いたのだが、オヤジの結論は出なかったらしい。
力になれず、申し訳ないといいたいが、なぜか言葉がでない。不思議だ。
しかし、結局の所、効率化だけ考えるなら、計算は簡単なので、
何となくで決めるのではなく、しっかり、どれくらい時間短縮になるか、計算した上で、決めた方がいいとアドバイスはしておいた。
あとは、オヤジが、家族と話し合って決めるのだろう。
しかし、見た所、店には散髪台が2つあり、ほぼ両方まわしているので、
効率化を考えるなら、2台。計240万が必要になる。
年間売上が1000万に満たない店なので、(消費税を払いたくないので、超えそうなペースだと、休むらしい)
売上を拡大したくない人に、それだけの投資が必要なのか、私には分からなかった。
あとはオヤジが決めるのだろうが、個人的に、機械に洗われるよりは、
20年間、洗ってもらったオヤジの手で、できれば今後も洗って欲しい、と思った、40歳の冬であった。
では。