「社員は家族」と社長はいうが、社員は親と思っていない

会社やめるまでの軌跡

今日も元気に、アフターファイブはセミナーだ。先日に続き、2日連続である。

しかも昨日は個人的に行きたかったセミナーだったが、本日のセミナーは完全に人数合わせ。

飾らずにいえば、体のいい生贄である。

あえて団体名は避けるが、わが社は多くの中小企業が所属する法人の会に籍を置いており、そのお努めとして、定例セミナーには、一定の人数が出席する必要がある。

勿論、参加は任意、ということになっているが、部長クラスが各部署に召集をかけるため、実質強制みたいなものだ。

私も本音でいえば参加はしたくないが、自分が拒否しても、必ず社員の誰かが犠牲になるシステムが採用されているので、それならと、受け入れ続けてきた。

結果、いまでは湘北の桜木花道並みにスタメンとして固定され、およびの声さえかからない始末である。

まぁ退職したら、100%参加することはない類のセミナーだ。思い出作りも兼ねて、今回も気合を入れて行ってみよーと参加してきたが、しかし相変わらずの内容だった。

入社以来、おそらく10回以上は参加してきたが、このセミナー。大体の流れはテンプレ化している。

マニュアルでもあるのか、人選的に話すことがそれしかないのか、真実は分からない。

まず、講師は基本的に、会員メンバーである中小企業の社長が務める。

若い社長は登壇せず、概ね60~70の団塊世代であることが特徴だ。

話す内容は、

  • 若いときはバリバリ働いて稼いでました(ここで表彰歴や営業成績をアピール)
  • そこから起業 or 親の後を継ぎ、社長になりました
  • 最初は順風満帆でしたが、〇〇が原因で廃業の危機にさらされます
  • 家族の心も離れていき、一家離散は秒読みでした
  • そんな私が暗闇で出会ったのが・・・法人会でした(ドン!)
  • 最初は精神論ではどうにも・・・会費も高い(月1万)し・・・と思っていました
  • ですが!教えに沿って働く内に、みるみる活力が沸いて、私は変われたのです!
  • 家族も戻ってきて、会社の業績も回復。いまでは多くの社員を抱えています。
  • 入ってて良かった!皆も入ろう法人会(ドン!)

という流れで締められる。

宗教かな?

正直、ジャパネットたかたのCMを100回くらい見て、もう少しユーザーの引き込み方を学習した方が良い、と他人事ながら心配してしまう。

しかし、改めて書いて思ったが、本当にこの通りの流れなので、恐れ入る。

今日の講師も、このテンプレから1ミリもブレていなかった。

ストーリーも共通だが、もう一つ、この講師たちには大きな共通点がある。

それはほぼ全ての社長が、「社員は家族」を公言していることだ。

個人的に、この称号を掲げる会社は、概ね「ブラック」と考えて差支えない。

なぜか。

当然だが、社員は家族ではないからだ。

「社員は家族!」と言い切る社長は多いが、「社長は私の親です!」と明言する社員に、私はお目にかかったことがない。

正確にいえば、当の社長の前では、媚びへつらい、忠犬のような発言をしていたが、商談後、上役のいない席で酒が入ると、あっさり馬脚を現した人物なら、2~3人心当たりがある。内1人は、新入社員の頃の私だ。

世の中は広いので、中には本当に打算抜きで、社長を親と仰ぐ人もいるかもしれない。だが、そのような人物はごく一部のレアケースか、取り返しのつかないくらい洗脳された狂信者が殆どだと思う。

私は一度もこのような宗教に感化されたことはないが、これから社会に出る若人が洗脳されないか、いささか心配なので、自分なりの助言を残しておく。

こういったときは、周りの雰囲気に流されず、自分の感性を信じることが肝要だ。

本日の講師でいえば、私が引いた発言は、

  • 社員が家を建てたら、必ず訪問する
  • 社員の誕生日には、必ずお祝いの電話をする
  • 社員の「子供」の誕生日には、必ず会社からプレゼントを贈呈する

当たりだろうか。

これを聞いても、「うわー」と思わない人は、立派な企業戦士(社畜)になれる素質がある。自信をもってもらいたい。

ちなみに、誕生日のお祝いコールに出なかった社員がいたが、その後、メールで返事をしてきたそうだ。

「温かい電話ありがとうございます。感激します。この会社で働けて嬉しく思います。お電話しようと思いましたが、恥ずかしいのでメールでお送りします」

との事らしい。

なぜ、私が内容を知っているかというと、この社長がセミナーで、メール全文を晒したからである。若い子なのにとてもしっかりしていると、感激したらしい。

私にはその子の考えが手に取るように分かるが、言わぬが花という奴だろう。

ちなみに私も、入社して数年は社長の我儘に全て付き合っていた。その後は、小ぎれいな理由で、社長からの呼び出しコールを巧みにかわしていた。

今では社長であろうと、夜や休日の着信であればガン無視を決め込んでいる。超気持ちいい。

人生でそう何度も出来ることではないが、今まで、社長からの「家族サービス」に疲れ切った人がいたら、ぜひ退職前に試してもらいたい。このために退職するのも悪くない。そう思えるほどの快感が、そこにはある。

どうやら、ブラックで荒み切った心を洗浄するには、まだしばらくの時間が必要なようだ。これから社会人となる若者には、ぜひ、慎重な第一歩を踏み出して欲しいと願うばかりである。