先日、各部署に連絡があったのは知っていたが、宣言通り、その2人はやってきた。
間もなく令和を迎える、平成最後の4月に話題をさらった「働き方改革」。
その急先鋒である「労働基準監督署」Gメンの方々である。
いわゆる立ち入り検査で、クソ暑い中、わざわざ当社へお越しになったご様子。内情は知らないのだが、今回は相当、お上からきつく言われているようだ。過去もちょっとした突っ込みはあったが、今回のように、
「明日行くんで」
「逃げんなよ」
みたいな強引な流れは無かったように思う。
もっとも、本来、立ち入り検査は完全にアポなしで来るのも普通らしいので、前日に連絡があっただけウチはマシといった所だろう。
総務部長からは事前に、
「ヒアリングのため、一部の人間は、内線で呼ぶかもしれません」
「その時は、包み隠さず真実を述べてください」
とお達しがあった。
この宣言を聞いて、おそらく社員には2つの考えがよぎったはず。
一つは、
「額面通りに受け取って、本当に全てぶちまけてよいのか?」
という疑問。
もう一つは、
「〇〇さんは何て言うつもりだろう・・・?あとで聞いておこう」
という日本人特有の口裏合わせだろう。
ちなみに、私のスタンスは、
- 真実は述べるが、必要以上に会社を悪者にはしない
- 他人の意見を聞く必要はない
である。
私は会社で唯一のWEB担当者ということもあり、このブラック極まる会社の中でも、人一倍、残業が多い人間である。
とはいえ、必ずしも会社の指示で残っていたわけでない時間もかなりある。
というより、そもそも会社がWEBの仕事自体理解していない。指示もかかしもないのである。
私が何の仕事をしているか?と聞いて答えられるのは、所属長くらいなものだ。社長、専務、含めた、経営陣は一切答えられない。
その代わり、売上を出せたか、利益を出せたか、無駄なコスト抑えられたか、の3点のみで評価されたので、ある種の気楽さはあった。
一人裁量で続ける仕事に限界を感じたので、最終的に独立という道を選んだが、こういった経緯から、全て会社に責任を押し付けるのも夢見が悪い。
また、 他人の意見を聞く、なんてのは論外である。
- 聞いた所で本当のことを言うか分からない
- 本当のことを言ったところで、追及された時、その通りに答えるか分からない
- そもそも、他人がどう答えるか聞くこと自体に意味がない
からだ。
とはいえ、この様なスタンスが一般的ではないのも、理解している。
部署に戻れば、案の定、
「えー、どうする」
「私ー、正直いってやろうかと思うんだよねー」
「あるあるー。私も部長について言いたいことあるー」
と、ごらんの有様である。
本当に真実を告白するつもりなら大したものだが、その気配はみじんも感じ取れない。
残念ながら、彼女たちのこういった時の発言は100%ブラフである。もっとハッキリ言えば、自分酔い超気持ちいい。
本気でそう思っているなら、私のようにさっさと退職を決断すれば良い。
また、言うのが大変心苦しいが、重ねて申し上げる。彼女たちはそもそも、「残業をしていない」。
せいぜい、終業後、タイムカードを押すまでの数分だ。
確かに法律上は1分でも残業だが・・・。毎日数分の残業で、よくここまで胸を張っていえるものだ。尊敬に値する。
確かに30分ほど席に残っている日もあるが、知っている。それは、自分たちのブログやSNSを更新しているだけなのを。一応、統括リーダーなので、残ってまでやる仕事がないのは全て把握している。
結局、ウチの部署からは誰もお呼びがかからず、Gメンたちはいくつかの資料をもって、去っていった。あとには虚ろな目をした初老の総務部長だけが残された。
ある程度話す仲なので、経過を聞こうかと思ったが、その疲れた横顔から、興味本位で質問するのは、はばかられた。なにか決定が出れば、おのずと知ることになるだろう。
ウチの部署における、彼女たちのように、給料分の仕事を全くしておらず、権利のみ主張し、その悪意なき行動、言動で、モチベーションを持つ人間のやる気を削いでいくブラック社員は、残念ながら、少なからず存在する。
むろん、そんな無駄口をたたく余裕を与えている会社が一番悪い。だからといって、彼女たちの行いが全て正当化される、というのも、また違うのではないかと思う。
ブラック企業も確かに大概ではあるが、両方を知っている立場からすれば、ブラック社員にも、マスコミはスポットを当て、両側面を報道すべきでないかな、と思う今日この頃である。
文句のいえない相手にだけ、マウントをとるのは格好がよろしくない。社会に義憤をもつ皆さまも、そうは感じないだろうか。
瀕死のブラック企業を叩いても、必要以上の埃はでない。これ以上、余計なことをして、私の退職金を減らさないでいただきたいものである。