通販でいえば、大抵CV=注文数である
人が長年勤めた会社を、辞める、と決断する時、そこには本人しか分からない、実に多様な理由がが含まれると思う。
自身のことを振り返っても、大きく分ければ、
・今の会社に愛想がついた(洗脳から目覚めた)
・自分をもっと成長させたいと思った
が主な理由であるが、思い返すと、心に蓋をしていた様々な出来事が、浮かんできた。
そのうちの一つが、冒頭の
「CV?なんだそれは?」のセリフである。
CVとは「コンバージョン」の事である。 和訳すれば「転換」であり、目標達成値として使われる。
WEBマーケティングにかかわる人間であれば、毎日のように使う用語であり、英単語でいえば、I(自分)くらいが相当するかもしれない。
一度、覚えれば、意味も難しくない。
通販の場合、注文数をCVとするなら、5件注文があれば、今日は5CVでした。となる。
資料請求の問い合わせ完了をCVとするなら、資料請求が10件あれば、10CVである。
だったら、注文数、問い合わせ件数、でいいじゃないか、と言われそうだが、WEBの世界では、何を「成果」と見るか、はケースバイケースであり、いちいち、言葉を分けるのも面倒なので、(敷居の高い商品であれば、とりあえずカートに入れて、入力フォームまで行くことをCVとする、なんて例もある)
特定の目標を設定し、その達成をもって、ユーザーが顧客に「転換」したことを、CVとするのが一般的である。
まぁ、長々と話したが、様子するに、通販であれば、大抵、イコール「注文件数」と思って差し支えない。
CVとは注文数のことですが~と説明し続けた3年間
当社でも、10年以上通販をしてきたが、新聞、雑誌の反応が鈍ってきたので、7年前ほど前からWEBでの集客に力を注ぐようになった。今では、9割以上が、ネットからの注文になっている。
そして、ネット通販のEC事業は、ほぼ私(と外部)のみで、回している状態が続いている。
次々とトレンドが変化するWEB事業の手法に、会社全体として、ついていくことが無理になったのだ。
しかし、組織として、その状態は不味いと悩み、月例の報告や、レポートの作成でも、事業がWEB中心になってきてから、出来る限り分かりやすい表現を心がけてきたつもりだ。
多少、事実を不正確にしてでも、伝わらなければ意味がないと、専門用語の記載も、可能な限り避けた。
それでも、CVという言葉は、流石に全ての基本であり、Yahoo、Googleのデータにも入るので、使用してきた。
会議や報告のたび、「CVとは注文数のことですが~」と、説明を入れるのも忘れなかった。
そんな流れが、2~3年続いた、ある日のことである。
社長と、その他役員と会議をしていた時、先月のレポートで分からない部分がある、という話になった。
これまでは、全く突っ込みが入らなかったのだが、おそらく初めて、売上が昨対比で低下したので、気になったのだろう。
そこで、改めて、あれはこれこれで、予測済みの数値であり、これこれで施策をうつ計画です、と、報告書にある通りのことを話した。
そこで、ボスから出たのが、冒頭の一言である。
「ふむ、でCVってなんだ?」
と。
本気でない人間には、どんな言葉も、身に入らない
私は絶望した。
入社以来、PCを操作している所を一度も見たことがない、70歳の社長が、CVの意味を覚えてくれなかったこと、ではない。
「やれやれ・・・」と思い、周りを見渡せば、
他の役員も、一人を除き、全てが同じように「?」という顔を浮かべていたからだ。
所詮、 私がいつも提出する書類に押されてるハンコなど、めくら版であることは理解していた。
それでも、ここまで、会社の経営陣が、通販売上の9割を占めるWEBに、「他人事」であるとは、思っていなかったのだ。
分からなければ、呼び出して叱責すれば良いではないか。お前の説明は分からん!と。
結局の所、
「これからはWEBだな!」
「そうね!会社としてもWEBで他社と差をつけないと!」
と掲げながらも、本気でそう思い、行動していたのは、自分だけだった、という事なのだろう。
そう分かった時、私の中で、何かが切れてしまった。
「どうしようもない」と思った相手も、誠意をもって接していけば、人は、少しずつ変わるのではないか、と私は長年、誤解していた。
その時間を無駄だったとは言わないが、「とても非効率だった」とは、今更ながら思う。
あなたが、上司や会社のトップと接する機会があれば、その本気度を自分なりに測ってみるのは、大切なことかもしれない。
たとえ医療技術が進化しても、人生は決して長いものではなく、予兆なく当然終わるものであり、その日々を、血の通う、濃密な時間にすることは、他の誰でもない。自分にしか出来ないことなのだから。