こんにちは、さぼてんです。人もアラフォーになってくると、中々、日々感銘を受ける言葉も、少なくなってきますが、それでも、年に何回かは、唸らせる一言に出会ったりするものです。
先日読んだ、養老孟司さんの書籍「遺言」に出てきたこの言葉もその一つ。深く、心を動かされたので、紹介したいと思います。
現代は、「意味のあるもの」で満ちている。
平成も最後の年を迎えて、何となく振り返ったりするのですが、ふと、部屋の中を見てみると、
「意味のないもの」が減ったなぁー、と感じました。
スマホは勿論として、ipad、ゲーム機、IOT機器…。どれもこれも、私にとって、
- いかにコスパがよく
- いかに合理的で
- いかに生活を豊かにするか
という判断のもとに選ばれた品ばかりです。
勿論、これらが無くなったら私は困ります。
しかし、人口10万以下のど田舎にすむ私でさえこうなのですから、都会では、さぞや「意味のあるもの」ばかりに、人は囲まれて暮らしているのだろうな、と感じました。
「すべてのものには、意味がある」という思い込み
都会に住むと、暗黙の内に、「すべてのものには意味がある」と思うようになっていく。周囲に意味があるものしか置かず、一日、そればかりに囲まれているから、その世界は、意味で満たされてしまう、と本には書かれています。
確かに、東京などに出張で行くと、非常にぎゅうぎゅうと、「意味」で満たされた町だなと、私も感じます。
「樹木を植えたり、公園も設置している。少しでも自然を感じられるように努力している」、という声も聞こえてきそうですが、そういう事ではないのです。自然が少ないという意味ではない。
おそらく、その設備を設置するため、元々そこに生えていた雑草や小動物は、「意味のないもの」として 除かれたと思います。。こういった積み重ねが、意味のあるものだけに囲まれる環境を、だんだんとつくっていくのだと思います。
ですが、誰もが知っているように、ひとたび都会を離れ、少し違う世界へお邪魔すると、そこには意味のないものであふれている。知らない虫、見たことない草、誰も住んでいない家。
そう、本当は、世界は自分にとって「意味のないもの」だらけなんです。その当たり前を、人はつい忘れてしまう。
「意味がないもの」には、意味がある
禅問答のようですが、意味のないものには、どういう意味があるのか。
意味とは結局、自分にとって価値を感じるか、どうかです。
例えばですが、私は特にペットに興味はありません。会社でペット好き同士が会話をしていても、何も思いませんし、ペットフードやら、ペット用のサプリなどにも、全然興味がわきません。仮になくなっても、人は代わりの心を埋めるものを見つけるだろうと、社会的意義もあまり見出せません。
なので、私にとって、「ペット」は意味のないものです。勿論、そんなことを公言しても全くメリットはないので、おおっぴらに言ったりはしません。
ですが、世の中の99.9%がペットに興味がない世の中になったとしたら、私は普通に、
「ペット?全然興味ねーよ。ある人いるの?」
と話すでしょう。
これは、自分が「意味のないものの存在を許さない側」に落ちたことを意味します。
「私には、その存在意義がわかりません」まではいいのです。
しかし、自分にわからないことは全て「意味がない」と断じてしまうと、やがて非常に危険な思考へつながっていきます。
それが、極端に表れた例が、2016年に19人の犠牲者が出た「相模原障害者施設殺傷事件」です。
この犯人が繰り返し主張したのが、「障害があって動けず、社会的貢献もできない存在に意味はあるのか」いう問いです。
私は、直接、障がい者の方とかかわったことがないので、具体的に、こう意味があるんです!と、本気で語ることができません。
ですが、これだけはいえます。
そのように、「意味がないものは許さない」という思考に染まった人間に、私はなりたくないと。
今の私にとっては、意味がないものは、「意味がないこと自体の大切さ」を、私に教えてくれていると。
「すべてに理由はある」と考えがちな、分析担当者にもおすすめ
都会に住んでいるどころか、むしろ田舎に長年住んでいるこの私に、なぜ今回この本がここまで心に響いたか、と考えると、思いつく所がありました。
私はWEB担当として、毎日のように、広告運用の管理画面を眺め、いくつかの分析ツールで数字を追い、BIツールで解析する業務を行っています。
すると、自然と「すべてのことに理由はある」という考えに染まりがちです。これはこれで分析スキルには必要なことです。
ですが、それが私生活というか、人生の思考にも影響があると、いささか都合が悪いなと、感じました。
「すべてのことに理由はある」かもしれませんが、自分にとって理由はない、見つからないことも沢山あるはず。
仕事に飲まれて、大切なことを見失わないようにしようと、思える一冊でした。