奨学金は「リスク」である

人生観・仕事観

アラフォーで、やっと返済が終わる「奨学金」

夏の引っ越しに向け、色々整理してたら、JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)から来ていた、奨学金の返済終了日を知らせるハガキを見つけた。

私は内容の分かり切っている郵便物は、冷蔵庫の横の棚にホイホイ放り込んでいるので、あまり意識してなかったが、

今年の9月で、やっと返済が終わるらしい。長かった。

こんな風に、今では余裕ぶってるが、私は20代の頃、奨学金の返済に追われ、精神的に追い詰められた時期があった。

最近のニュースを見ていると、奨学金延滞で苦しむ若者は以前よりも、むしろ増加しているらしい。

今なら分かるが、奨学金は「リスク」だ。

勿論、学生時代は、それで恩恵を受けたのも事実だが、今から思えば、必ずしも奨学金がなくても、バイトや、やり繰り次第で、同じような生活は送れたと思うし、

それが無理だったとしても、違う生き方を選ぶこともできたように感じる。

人それぞれだと思うが、もしかしたら、私の経験も、これから奨学金を考える若者の参考になるかもしれないので、お話ししたい。

一度の退職から崩れた、私の返済計画

私は、高校生と大学生の時、どちらも奨学金を借りていた。

日本育英会からの奨学金(2種)で、高校は42万円、大学は207万円、計約250万円を借りていたようだ。(ハガキを見ると)

大学は幸い、国立大学だったので、意外と安くすんでいるが、これでも追い詰められたのだから、500万や1000万円借りている学生はどれだけのプレッシャーがあるのか、想像に難くない。

いや、むしろプレッシャーを感じているなら、いいことだろう。怖いのは、その借金の重みを想像できていない場合だ。

私の場合、新卒で東京の会社に勤めた後、3年間は全く問題なかった。

当時は400万ほどの年収だったが、好きに使っていても、それなりに貯金はできていたし、奨学金の返済など、殆ど意識していなかった。

しかし、激務に追われ、心身ともに疲れ切って、うつ状態となり退職。実家に帰ってから、その歯車が狂いだした。

当時、25歳だった私は、世の中を甘く見ており、公務員になろうか、転職しようか、まぁ1年くらい実家でのんびり考えよう、などと夢見ていた。

いわゆるニート生活をしており、収入の見込みはなかったので、奨学金も返還猶予手続きをとった。

しかし、リストラ後、独立開業していた父が、何人もの連帯保証人を引き受けていたことで、急遽、約4000万の借金が発生。

結果、自己破産することになるのだが、復帰を果たすまでの生活的な支えは、全て、私の貯金で補うことになった。

そのため、のんびり試験勉強などしていられなくなった私は、いそぎ地元の中小企業に就職

その会社に15年勤め、さらにWEB担当者になるとは、当時夢にも思っていなかったが、それはまた別の話。

給料は、手取りで14万。東京で新卒で勤めていた時の半分ほどの収入になった。

給与差し押さえに向けて、会社へ連絡がいく

この給料で、一人暮らしをしながら、実家を金銭的に支えるのは非常に困難だった。

25歳くらいだと、友人の結婚式も、年に数回はあったが、祝儀代がなく、サラ金で借りて用意立てたこともあったほどだ。

そして、奨学金の返済、ましてや返済猶予の更新手続きなど、すっかり忘れていた。

おそらく、督促の電話やハガキが来ていたと思うが、精神的余裕もなく、ある種投げやりになっていた私は、それを無視していた。

そしてある日、会社の常務に、別室に呼ばれ、

「奨学金の返済のことで、育英会から連絡が来ている」と言われた時は、衝撃だった。

確かに、連帯保証人に連絡がいくことは知っていた。しかし、連帯保証は父だったので、自己破産しており、仮に何か連絡がいっても問題ないと高をくくっていた。

奨学金を延滞し、連絡もきちんとしなければ、給与差し押さえのために、会社に連絡がいく。

考えれば当たり前のことに、当時若かった私は気づかなかった。

幸い、常務は私の心情を察してくれて、深くは聞いてこず、給与の差し押さえも、今からきちんと毎月返済すると連絡したことで、何とか回避に成功した。

今、数百万の借金を負う必要が本当にあるのか

それから、色々なことがあったが、一度も返済を滞ることはなく、

こうして、独立するだけの資金もできて、返済の終了日を知らせるJASSOのハガキを、温かい目で見る心の余裕もできた。

しかし、こう思う。私は運が良かっただけだと。

借りた金額が250万程度であり、月々の返済額も17000円ほどだから、何とかできた。

これが借金500万であれば、はたして、今のように余裕のある生活に戻れただろうか。

もちろん返済猶予期限は最長10年あり、色々な制度が出来ていることも知っている。

そして、返済を滞らせた私が一番悪いのも理解している。

しかし、やはり借金は借金なのだ。

返済額を下げても、猶予しても、その借金自体が減ることはない。

未来がどう動くかは分からない。AIの導入も進み、仕事の仕方自体が、大きく変わろうとしている。

今の時代、収入が少なくても、生活費を極力抑えて、楽に人生を過ごすことも可能だ。

今の私のように、WEBをメインとしたフリーランスで、独立しても良い。

ブログやアフィリエイトで、学生の頃から学費を稼ぐことも不可能ではない。

失敗してもリスクはないし、マーケティングを学んだという貴重な経験が残る。

繰り返すが、奨学金は借金だ。それも人生を追い詰めるほど巨額の。

働き方、過ごし方が多様化しても、借金の重さは変わらない。

たとえ、気楽に生きようとしても、バリバリ働こうとしても、500万の借金は500万なのだ。

奨学金は、選択肢を奪うリスクだ。

もちろん、選択肢を与える手段でもあるが、それは今の時代、いくらでもやり様がある。

一度、奨学金を受けてしまえば、だまってても毎月数万の金が手に入る、というその甘さから、人は逃れることができない。

これから、数百万の借金を背負おうとしている若者に伝えたい。

そのリスクの重みと、他の可能性を、本当に考えただろうか、と。

所詮、私個人の体験であり、知識不足の面も多々あると思うが、もし誰かの参考になるとしたら、幸いである。