本日、ついに社長に退職を告げた。
社長に自分でわざわざ?と思う人もいるだろうが、小さな中小企業であり、私はかなり特別扱いを受けていたので、それなりの筋の通し方、というものがあった。
また、私は一度目の会社を退職していた時、今の社長に拾ってもらった、という恩もあった。
だが、予想通り、残念な反応だった。直属の上司と、次期社長のジュニア君という、二人の出来すぎた人間にしか退職を告げてなかったので忘れていた。これが普通の反応なのだろう。
どこかで、社長も惜しいといいつつ、起業したころの自分を思いだし、笑顔で送り出してくれる。そんなあり得ない未来を、少し期待していたが、もちろんそんな世界はおとずれなかった。
「なぜいまやめるんだ」「これからが会社が伸びるときなのに」
「きみがいないと通販事業は成り立たない。君が辞めるなら、事業を潰すしかない」
「とにかくあと1~2年頑張ってみてくれ。これ(退職届)は預からせてもらう」
それが答えだった。いやー、ほんと下調べした通り。ネットは全て正しいわけではないが、大半は正しい。
確かに私しか、社内のWEBやシステム、通販事業のことは分からない。だが、経験者を引っ張ってくれば引継ぎは可能だ。待遇さえ考えれば、いくらでも可能性はある。
たかが一社員が辞めるくらいで、事業そのものを潰すわけがない。誰が考えても分かること。これは、残念ながら、実質の脅しなのだ。
だが、社長自身も、「この瞬間だけ」は本気でそう思っているので、言葉も切実になる。これまで、会社にお世話なったのは間違いないので、企業のトップにこういわれたら、悩む人もいるはずだ。私は、これは残酷な社長の処世術だと思う。
頭ごなしに、「ふざけるな!「やめさせてなんてやらない!」と言われたら、誰でも反感をもってしまう。開き直られるよりも、有効な手段だ。これをナチュラルにできるのが、やはり社長という人種なのだろうな。
ただ、私があまりにも首を縦に振らないので、最後は、退職金が出ない(と匂わせる)発言が出たのは、少し残念だった。演じるなら、最後までそうして欲しかった。
世の中には退職金が出ない人も沢山いるので、別に出なくても仕方がないと考えている。(もらえるなら勿論欲しいが)。
だが、時期を延ばせば退職金が増える、という風な言い方は、してはダメだろう。金目当てなら独立してやめようなんて思わないよ。社長。
そもそも、「退職金が少しでも増えるなら、もう少し残ります!」なんていう人に働いてもらいたいと本気で思うのだろうか。私には分からない。
だが、救いもあった。
ジュニア君の態度は、事前に相談した時も、その後も変わらなかった。むしろ、社長の発言と、私へのフォローを、その会合後、すぐにしてくれた。
人の心の機微、そして、どう相手に接したら良いか、という事、すぐ行動することの重要性、それを全て分かっていないとできないことだ。きっと、社長も、若いころはそれができていたのだろう。
私が同じ立場なら、事情は概ね把握できても、まだ入社して2ヶ月しかたってないのだから、自分の知らないことが色々あるのかもしれない・・・と躊躇して、的確なフォローなどできなかったと思う。
そして、次期社長であるジュニア君に、まず報告すべきと提言してくれた直接の上司。こちらにも頭が下がる。私は、まず社長にいうべきと思っていた。結果、全てがうまくいった。
一番泥をかぶる立場の二人なのに、自分よりも相手のことを考えた。私もこの生き方を見習って、生きていきたい。
尊敬できる人は、直属の上司一人と思っていたが、最後に一人増えた。次期社長、尊敬できる人だった。一緒に仕事できたら楽しかったかもしれない。
いい息子を育てられましたね。社長。