WEB担当者が一番求めているのは、「理解者」である

会社やめるまでの軌跡

仕事仲間を戦友に例える人がいる。

大げさな、そう思っていた。少なくとも、今日までは。

数時間前、初めて取引先に、自分が間もなく退職することを告げた。第一号になる。

まだ、社内でも私の退職は内密の話なのだが、業務の都合上、少しでも早めに伝えなくてはならない相手だったので、上からOKがでたこともあり、今日、Skypeで打ち合わせした後、退職を告げた。

相手は東京のWEB広告代理店。業界では10本の指に入る大手企業だ。

さらに、担当してくれた人は、その中でもエース級の方である。

本来、ウチのように、月300万円程度の広告予算では、とても担当してくれない方なのだが、とある縁で、直接担当をしてもらえることになった。

礼節をわきまえつつ、歯に衣を着せぬ方で、気兼ねに何でも相談できる相手で、事あるごとに意見を交わし合い、通販を売上を1円でも挙げるため、互いに切磋琢磨してきた。

私が尊敬している人を3人挙げろと言われたら、間違いなくその中の一人に上がる人物だ。

退職を告げるのはつらかった。

この人と仕事をするのは本当に楽しかったからだ。

自分が必死で勉強しても、まだまだ高みに居る。それでも議論する時は、自分の所まで下りてきて、田舎の中小企業という、結構どうしようもない部分も多い相手に、どうしたら問題を解決できるのか、いつも真剣に考えて意見をくれた。

そして、私自身も、この人と仕事をしていると、自分が一歩一歩、成長していることが実感できた。社内の人と仕事をしていても、全く感じられない充足感がそこにはあった。

WEB担当は孤独だ。会社の中では貴重な存在だが、「いないと困るが、実際、何の仕事をしているかよく分からない人」。それが、社内のその他大勢にとっての、私の評価だろう。

売上が上がっても、下がっても、それがなぜなのか、理解はされない。

理解されるように、できることから成功体験を重ねることが、社内全体の底上げにつながる。そういう正論を何度、自問自答したか分からない。

その通りだが、それでも、無理なのだ。経営者が仕事に対し、「本気」でなければ、会社は変わらない。社員一人が何をしようが、組織も人も変わらないのだ。10年以上やり続けたが、会社にはさざ波一つ起きなかった。

だから、私にとって、理解者とは、取引先だけだった。その理解者に別れを告げるのは、本当につらかった。

だが、驚いた。

勿論、急に退職を告げたら驚くのは予想していた。

だが、私が想像した以上に、相手は、悲しんだ。私と仕事をするのは、とても楽しかったのに、残念でならないと。

大手のWEB会社のエースが、狼狽した声で、ただの田舎のWEB坦にそういってくれた。

嬉しく、そして悲しい気持ちになった。

Skypeを終えた後、上司にそのことを話したら、こう言ってた。

「よく分かる。本気で理解し合える相手と仕事をするのは、とても楽しく、貴重なこと。それは、大手の会社でも、多くあることではない。きっとあなたが思っていた以上に、相手もあなたとの仕事が楽しかったのだろう」と。

そう聞いて思った。これが戦友というものなのかと。

これから、私はフリーランスとして生きることになる。できれば多くの戦友で出会える人生でありたい。そう思った、一日だった。