最近、どこもかしこも、「自動化」という言葉が流行っている気がする。
それは私のメイン業務である、WEB広告も例外ではない。
WEB広告は、運用型広告と呼ばれるものが殆どで、
掲載したら、基本それで終わりではない。
運用担当者が、日々、チューニングする必要がある。
具体的には、競合の動きを踏まえた広告文の調整や、ユーザー属性(年齢、性別、趣味・嗜好などのオーディエンス)を考慮した入札単価調整、CVに結び付かない検索クエリの除外などが挙げられる。
その工数は膨大で、きらびやかなイメージとは裏腹に、WEB広告の担当者はブラックの代名詞で、毎日深夜まで、ポチポチ地味な作業をしていたイメージがある。
だが、アカウント設計をシンプルにすることが主流となり、「自動入札」という便利な機能が生まれてからは、その状況が大幅に改善された。
中には、入札どころか、広告運用全体を自動化するようなツールまで生まれている。
このようなことから、
・もう広告を手動でやるのはオワコン
・広告運用は、全部AIで自動化したらOK
・あとは人でないと出来ないデザインやサービスに注力するべき
と、まことしやかに囁かれるようになった気がするが、正直私は疑問である。
私はこれまで、クライアントとしても、運用者としても、WEB広告を経験しているが、
「とりあえず自動化すればOK」という言ってる人は、
あまりどちらも、自身で体験したことがない人ばかりのように感じている。
または、いわゆるツールの営業側か。Yahoo、Googleの担当者はやたら「自動化」を進めてくるが、どうも営業的な匂いが強すぎる気がしてならない。
まず、自動化には2種類あると思う。
一つは、素人を楽にする自動化。家電や車の機能はこれだ。
もう一つは、プロのための自動化。プロの仕事をより効率化し、成果を上げるための機能だ。
私はWEB広告の自動化は後者だと思っている。
確かに、自動化の設定自体は、アホでもできる。
手動→自動に、スイッチを切り替えるだけのようなイメージだ。
だが、その後、数字がメキメキ改善していくか、というとそんなに単純ではない。
おそらく、一時的に良くなっても、また、次月は落ち込んだりして、手動の時の方が良かったんじゃないか?と疑問を抱いたりするのが、普通のはずだ。
そこで、「自動にしても成果が上がらないのは、何が問題なのか?」を仮説検証するには、
結局、手動で運用できるくらいの知識とスキルが必要となる。自動化したら、あとはオッケーとはならないのだ。
その当たり、一度でも運用型広告を経験していたら分かるはずなのだが。
相手を選ばず、やたら「自動化」をすすめる今の風潮には、若干の危惧がある。
あと数年して、AIの知能がより人間に近づけば、まさに、ボタンをポンしたら、広告の運用は全てシステムがするようになるかもしれない。
だが、商売である以上、結局は競い合いなのだから、勝つためには、どこかで人の手が必要になる部分は出てくると思う。
どれだけマシンの自動化が進んでも、最終的にはレーサーで決まるF1のように、腕を磨いておきたいものである。