最初、報道で知った時は、「世も末だな」と感じた退職代行だが、段々と広がりを見せ、今では若者を中心に、それなりに利用されるサービスとして、市民権を得ているらしい。
私は今でも自分ではまず使わないサービスだと思っているが、需要があるのも、社会的価値があるのもよく分かる。
ただ、24歳の時と、アラファーの今で、2回、退職経験がある身としては、少し感じたことがあるので、述べてみたい。
それは、「退職代行は、言うほど合理的なサービスではない」と感じる点である。正確に言うなら、「コスパがいいとは思わない」が近い。
まず、退職代行を使うケースとしては、大きく分けて、2つのパターンが考えられる。
一つは、パワハラ・セクハラや、過剰労働の悩みを抱えており、一日でも早くこの環境から逃れたいが、「どうしても自力で退職を切り出せない」というパターンである。
これについては、退職代行は非常に便利な解決手段だと思う。
弁護士に頼むと費用が高いし、そもそも若者は、弁護士に頼むハードルが高いので、LINEで依頼をするだけで、即実行できるという手軽さは、まさに社会の問題に風穴をあける、素晴らしいアイデアだと感じる。
問題はもう一つのパターンである。これは単に、「面倒だから」で利用されるケースだ。
統計データを見たことないので、何ともいえないが、おそらくこの「面倒だから」という理由の方が、利用者は多いのではないだろうか。
理由はよく分かる。
「引継ぎが大変そう」
「退職を伝えてから、最終日まで残るのが、色々な意味でしんどい」
「もう気持ちがないのに、会社のために仕事するのが無駄」
あたりが、気になるのだろう。確かに概ね合っていると考えて差支えない。
これらの問題を一気に解決できるなら、3~5万の依頼料は「コスパいい」と考える人もいるだろう。
ただ、個人的には、上記の問題はわざわざ代行へ頼まなくても、簡単に解決できると感じている(特に若者の場合)。
理由は、
・引継ぎは最低限でOK(データを整理して、場所を教えるだけ)
・有給全消化なら、上記作業の1~2日だけ出社すればOK(有給10日ほど必要)
だからだ。
まず、引継ぎについて。
引継ぎと聞くと、「マニュアルの作成」「各所への連絡」など、作業が膨大になると思うかもしれないが、正直、こんなことまで辞める人間がやる必要はない。全て会社の仕事である。
辞める本人がすることは、「自分しか分からないデータを、違う人にも分かる状況にすること」。具体的には、アカウントのパスワードや、過去作成した書類、グラフデータなどを、フォルダにまとめて、誰かに渡す。
これだけでOKである。
頭にしかないデータや知識の面倒まで考える必要はない。それは、個人だけにノウハウが蓄積される体制を許した会社の責任である。
確かに私も、過去の退職では、作業マニュアルだの、後任への指導など、色々なことをしてきた。
だが、退職する人間は、本来そこまでする義務はない。また、必死に教えた所で、やる気のない後任や、会社自体が腐っている場合は、何の意味もない、ということも理解できた。
なので、もし3回目の退職があるとしたら、間違いなく「データ残し」以外の作業はしないだろう。
これだけなら、集中して作業できれば、1~2日で終わる仕事だ。
また、出勤日数については、ご存知の人も多いと思うが、法的には、「退職日の2週間前に告げれば退職可能」である。就業規則になんて書いてあろうと、こちらが優先される。
※一般的な就職の場合。契約期間で働いている場合などは違うので注意。
なので、入社してすぐは難しいが、半年以上働いていれば、10日の有給が与えられるので、土日休みの会社なら、それだけで、
10+4=14日(2週間)
の条件を満たす。
なので、理論上は、
1日出社して、退職届出して、有給届けだして、データをまとめて、あとは会社に行かなければ、それでOK、なのである。
社会人1年目なら、大して重要なデータも扱ってないだろうし、それさえ必要ないかもしれない。
そんな度胸ないわ・・・、という人も多いだろう。それは分かる。私も万人には進めない。
ようは、3万、5万払うのと、どちらが良いか、という話である。
どうせ二度と会う事のない人達だし、自分でやるわ、と開き直れるタイプなら、「その方がコスパいいよ」という、それだけのことなのだ。
実際、私はとある事情から、金に困った時期があり、その時は、友人の結婚式の祝儀代さえなくて、カードでキャッシングしたことがある。あの時は、1万円でも、とても貴重だった。
そんな風に、3~5万を高いと考えるなら、1日出社して退職するのも、悪くない選択肢ではないだろうか。意外と代行を頼むより、罪悪感もなく、すっきり終れるかもしれない。日給3~5万のバイトと考えるのもありだろう。
周りがギャーギャー言ってきたら、最悪、その日も有給にして帰れば良い。当日有給は、普段から認められているなら、問題ないはずである。どうしても有給は認めないといわれたら、退勤扱いでOK。どちらにしても、3~5万よりは、遥かにコスパがいいはず。
選択肢は色々ある。自分に一番よい方法を見つけてみよう。