私は15年近く、健康食品の通販部門に従事したので、その手の事情はある程度、知っている。
その上で、一般の方からよく問い合わせをいただくが、社員である以上、答えられることと、答えられないことがある。
そのジレンマについては、特に今更気にするものではないが、退職し、自由になる上で、守秘義務に触れない程度に、少し自分の考えをまとめておきたいと思う。
まず、前提として、私は健康食品には、否定的な立場である。その辺りのことは、過去記事に書いたので、そちらを参考にして頂きたい。
さて、健康食品となると、つきものなのが、「お客様の体験談」である。
昨今は行政の規制強化がすさまじく、マトモにルールを守っている会社の体験談は、箸にも棒にもかからない、しょうもない内容のものばかりだ。
「現在も趣味のランニングを元気に続けております!」
とか、
「相変わらず笑顔が素敵ね、とよく言われます」
とか、そういうやつである。
ちなみに、「〇〇<商品名>のお陰で、今も元気にランニングを続けております!」
は商品による健康増進を示唆するのでアウトである。(トクホ、機能性表示除く)
この辺のさじ具合は一般の方には殆ど分からないと思うので、また、別記事で触れてみたい。
さて、体験談が嘘かまことか、という話であるが、正直、上記のような体験談であれば、どちらでもよい、というのが、多くの感想だろう。こんなものは、誰でも書けるので、参考にしても仕方ないからだ。
殆どの人は、「雰囲気」だけで読んでいるはずである。広告内にあるオブジェみたいなものである。それでも、体験談コーナーがあるとないでは、「有り」の方が、ユーザーのレスポンスが上がるので、やはり雰囲気というのは大事である。
話がそれた。前述のとおり、嘘かどうかは、どうでもよいレベルだろうが、私個人の意見としては、この手の体験談は、大抵「ホンモノ」である。少なくとも、その可能性の方が、圧倒的に高い。
私は15年間で、自社、他社、それなりの案件に関わったが、あえて偽物を使った例は、聞いたことがない。ネットだと、体験談なんて全部偽物だと言っている人がいるが、私はそんなことはないと思う。
なぜか。
「そもそも偽物を使うなんてありえない」という意見も当然あるが、それよりも、バレた時のリスクの大きさを考えると、本物を手配することは、正直そんな手間ではない、という話である。
例えば、単純に「知人を使う」という手がある。
おい!と突っ込まれそうだが、そんなピュアでは世の中生きていけない。きちんと商品を買っているお客様である。違いは、知り合いかどうか、という点だけ。差別はいかん。
確かに知人が悪いことを言うわけない、というのは正論だが、そもそも悪い口コミなど、体験談として企業が自社広告に載せるわけがない。そういうのは、SNSやレビューなどを参考にしてほしい。
もっとも、企業が知人を使うのは、良い口コミが欲しい、というより、「話がスムーズ」「トラブルが少ない(肖像権など)」という理由だろう。良い口コミを集めるだけなら、正直、難しくない。
健康食品というのは、どんな製品でも、必ずファンがいる。「私はこの商品があるから生きてます!」くらいの人が。正直怖いし、引く。おそらくこういう人が宗教にはまるのだろう。
まあここまでのレベルでなくとも、商品を愛してくれている人というのは一定数いて、体験談に協力して欲しいと募れば、大体、ゼロということはない。ウチも何回か、チラシやサイト掲載用にお願いしたことがある。
以上、私の結論としては、
・健康食品に使われている体験談は、大抵ホンモノである
・ただ、知人や身内が多いので、そういう意味ではホンモノではない
・なお、一般人の可能性も大いにあるが、大体、それは熱狂的なファンなので、参考にならない
・なので、体験談は雰囲気だけ読もう。決して、それを購入動機にしてはならない。
なんの指針にもならなそうだが、誰かの参考になれば幸いである。