中小企業の就職説明会で、人材サービス会社の「マンパワーグループ」が再委託した業者が、サクラの学生を公費で雇っていた問題がクローズアップされている。
私自身、中小企業に長年勤めていたので、人手不足の現状がどれほどか、よく分かっている。
おそらく、何でウチにこんなに人が?と多少訝しみながらも、「想像したより沢山来てくれた!嬉しい!」とぬか喜びをした総務の人間もいたことだろう。社長によい報告ができると。事実を知ったあとの失望感を想像すると、胸が痛い。
しかし、あえて厳しいことをいうのなら、企業側も、「ただ露出を増やせば、学生が来てくれる」という古い価値観は一旦捨てないと、こういった事例は後を絶たないだろう、と思っている。
私がいた会社も、何度言っても、それを理解してもらえなかった。
もう何年も学生が来ることはなくなった、コネのある学校に何度も打診をしたり、ハローワーク以外の求人には手を出さないのに、
人が来ない、人が来ない
と言い続けている。最後には、時代のせい、国のせい、金がないせい、という言い訳が始まる。うんざりする。
こういった点を考えると、やはり全てにおいてマーケティング視点は大事だと実感する。
なぜ、人がこないのか。
この問題は、集客(企業の認知)と成約(就職の合意)で分ければ、よく分かる。
中小企業では、集客の問題ばかり、何とかしようとしている。
これは成約の方に、問題がないと思っているのではなく、「そちらはどうにもならない」と考えているからだ。
大手企業とは違う、給料も上げられない、事業に誇れるような魅力もない
だから、とにかく認知だけをして、運が良ければ人が来てくれるだろう
と考えている。
逆である。
学生の数も、質も、以前とは全く違うことは理解しているはずなのに、 なぜそれを理解できないのだろうか。
考えるべきは、集客ではなく、成約。すなわち、企業としての魅力をどれだけ上げるか。
そうすれば、あとは自然と、SNSや、口コミを通じて、その評判が蓄積され、集客の効果を上げることにつながっていく。
いわば、投資のバランスを
集客:成約=9:1
から、
集客:成約=1:9
に変えることが大事なのである。
これをいうと、大体、
・そんなことしても効果が出ると思えない
・給料や休みはこれ以上増やせない。何もない中小企業では魅力を出せない。
という反論が来る。
まず、効果がでるか分からないのは当たり前である。とりあえずやれ。Doだ。
真綿で首を絞められるように、現状を嘆くだけで、座死するのを待つのが望みなら、特に何もいうことはない。
また、会社としての魅力を底上げする努力であれば、たとえ人材が見つからなくても、今いる社員のモチベ向上につながる。そうすれば、定着率と、社員からの口コミ効果も期待できるようになる。今の社員は、自分の会社を他人に紹介できないのだ。そこを変えられる点だけでも、費用対効果は充分にある。
そして、待遇面だが、これも、ウダウダいわずにやるしかないと考える。
人件費の重さは理解しているが、中小企業の社長も、身銭を切って努力している人と、儲かってもいないのに、いまだに高給取りでブイブイいっている社長と、2種類いる。
後者であれば、その分をとっとと待遇改善に回すべきで、それができないなら、経営者が変わらない限り、その会社は遅かれ早かれ、終了だ。
また、何も、給料やボーナスだけではない。例えば、Macbook Proを新入社員全員にプレゼントする、といった方法はどうだろう。
社員教育にかかる費用や、改めて求人をかける費用を考えれば、20万程度など誤差のようなものだ。当然、退職する人間にも、返却は求めない。
今の学生は、スマホだけでPCを持っていない子が多い。が、興味がないわけではない。
さらに、これからは副業をする人が増えていくので、PCがあると助かる子も多いだろう。
安物だとダメだが、高級なPCをくれた会社であれば、多少の恩義を感じてくれるかもしれない。もしかしたら、SNSでバズってくれるかもしれない。
こんなののは、ただの思いつきだが、ようはいくらでも、試すべき方法はまだあるのでは?と思うのだ。
サクラで来た学生、イリーガルな手法を実践する業者のモラル、公費の使い道などを嘆くより、根本的な問題の解決について、議論が巻き起こってほしい。そう願う。