勝手に期待して、勝手に失望する人たち

人生観・仕事観

私は褒められるのが好きではない。育ちが悪いので、根っから猜疑心が強いからだろう。どうも、相手の誉め言葉を素直に受け取ることができない。「何か裏があるのでは?」「言外に何を言いたいのだ?」と思ってしまう。

褒められて、「うれしいです!」と言えるひとが、純粋に羨ましい。褒める側だって、そう言ってもらえたら、きっと嬉しいだろう。

ただ、私がそのような態度をとるのは、もう一つ理由がある。それは、周りから過剰な期待をされたくないからだ。

人は、自分のできないことを誰かに期待する生き物だ。そして、その偶像が予想を裏切った時、勝手に失望する。そんなシーンを幾度なく見てきた。

もっと優しい人だと思ってました。もっと親切な人だと思ってました。もっと周りを大切にする人だと思ってました。もっと、もっと、もっと、もっと。

たとえそういわれても、正直、左様でございますか。としかコメントのしようがない。どれも私が公言したわけでも、掲げたものでもないからだ。

勝手なイメージで、自分の中で期待の人物像を作り上げ、それが違ったのでショックを受ける。残念ながら、そんな自慰の面倒まで見切れない。

ただ、これは誰にも起こりえることだ。そう思ったのも、今日行ってきたコンサートが原因だ。

クラシックのコンサートだった。場所はSS席。普段ならまず行かないイベントだが、今回はウチの会社が協賛ということで、大量のチケットを社長が購入したらしい。

某アーティストの件でもないが、やはりスポンサーとして、空席を目立たせるわけにはいかない様子。10000円もするチケットを、社員に無料でばらまいていた。社長というのも大変だ。

貴重な休日を数時間潰すのは惜しいが、ただでクラシックのコンサートに行けるのも、そうある機会ではない。喜んで1枚頂戴することにした。

演奏自体は特筆すべきものはなかった。おそらく良い演奏なのだろうが、教養のない私にはイマイチピンとこない。

最後の曲は、ベートヴェンの英雄だった。曲は知らないが、題名は何んとなしに知っている。

パンフレットにエピソードが書かれていた。端的にまとめると、

べ「ナポレオンすげえ!こいつこそ俺がもとめた英雄だわ。よし、こいつをテーマにした曲つくるわ!」

べ「は?ナポレオンが皇帝になった?あいつも権力の犬だったのかよ!がっかりだわ!こんな曲捨ててやる!ビリビリー」

という流れらしい。確かにどこかで聞いたことがある。

ベートヴェンはかなり変人だったらしいので、奇行にも特段驚きはないが、やはり「勝手に期待して、勝手に裏切られた」という迷惑な人は、歴史上、それこそ沢山いたのだろう。スキャンダルを見て勝手に発狂しているアイドルグループのファンと、根本は大差ない。

余談だが、この英雄は演奏時間が50分以上ある。正直長すぎでないかと感じる。ナポレオンが皇帝にならなかったとしても、睡眠を3時間しかとらないような人物が、50分の曲をしっかり聞き入るだろうか。正直疑問である。

さて、私の考えをまとめたい。

誰かに期待するのはいい。個人が出来ることは限られている。だから、「こうだったらいいな」という世界を誰かに託し、夢を期待する行為は、誰しもすることだ。

ただ、それがかなわなかった時、相手をけなしたり、勝手に失望する人と、夢を見せてもらったと感謝する人では、人間性に大きく差が出る。

誰のためでもない。私は後者でありたい。それだけが理由である。

なので、今日から始まったテニスの全仏オープン。

私は錦織圭が一回戦で負けても、決してけなしたりはしない・・・!

そう、今回の記事は、そのための自戒の記である。