30~40代の元同僚たちと酒を飲んでいて、ひしひしと感じるのが、皆からの、「独立する気満々オーラ」である。副業とか、準備したこととか、めっちゃ聞いてくる。
私が抜けて、残った人員たちは、
「さぼてんさんが抜けて厳しいけど、皆で頑張ろう!」
ではなく、
「やっぱこの会社やべーわ。俺らも、さぼてんさんに続けー!」
という考えにシフトしたらしい。よいことである。
そもそも、国自体が、副業、フリーランスを推進しているので、私のせいではない。
マトモな感覚の持ち主なら、このまま田舎の中小企業にいても、自分の将来が担保できないと考えるのが普通である。
おそらく、あと1~2年で、会社にわずかに残る優秀な人材は、どんどん流出していくだろう。会社が潰れることはないだろうが、相当事業を縮小せざるを得ないかもしれない。
正直、私にはもう関係のない話なのだが、今後、中小零細企業がメインの取引先になると思うので、もしかしたら、似たような話で相談をもちかけられるかもしれない。
なので、実際に流出した立場から、田舎の中小企業が、どうやったら人材流出を防げるのか、考えてみたい。
まず、自分の体験を振り返ってみると、一度「辞めよう」と決意したら、まずその考えは変わらない。
会社側は、待遇の改善や昇進など、色々提案してくるが、無駄である。
大企業ならいざ知らず、中小企業では、配置転換しても、環境は大して変わらない。皆、そのことを十分に分かっている。
よって、「一度でも決意させたらアウト」という前提で考える。
では、何が決意させるか。色々あるだろうが、一番は「外部との接触」でないかと考える。
田舎の中小企業というのは、非常に閉鎖的な社会であり、客観的に見て、異常なことがあっても、本人はそれに気づかない。
気づくのは、外部と触れて、その差を実感するからだ。
ここでいう「外部」とは、友人、SNS、セミナー、書籍、など、様々だが、私の場合、一番影響が大きかったのは、「取引先」である。
特にITベンダー、WEBマーケティング関連では、非常に先進的で、仕事に前向きな人たちが多い。「私は人生において、これを成し遂げたい」という明確なビジョンをもっている。だから輝いてみえる。
彼らの仕事にかける熱量と、現実とのはざまが、私に焦りと絶望感を与えた。
「辞める」という決意は、様々な要因が重なり、ある日突然、決壊するものだが、私の場合は、この「取引先との接触で生まれた絶望感」が大きな要因だったと感じている。
さて、では、これをどうやって防ぐかだが、大別すると、
①外部と接触させない
②外部に負けない魅力を内部につくる
の2つかと思う。②が理想なのは言うまでもない。
おそらく殆どの中小企業は無理だと思うが、ぜひ実践していただきたい。
では①は選んだ場合、どうするか。セミナーにも行かせず、外部の優秀な人材と接触させない、のが理想だろう。が、そうすると、スキルアップが図れない。本末転倒である。
なので、外部接触自体は防げないが、「独立・転職心が芽生える」のを可能な限り抑える、という策が落しどころだろう。
私の場合、会社からの期待が大きく、若手の頃から一人での出張、セミナーが多かった。しかし、これは独立心を煽る影響が強いと感じる。ちょっとした会話から、取引先と意気投合する可能性もありうる。
なので、ひとつの策として、
・セミナー、取引先(特に優秀な担当がいる会社)は、必ず、上司が同行する
・独立心が芽生えそうな会話、出来事があったら、「そんな甘くないけどね」と、芽をつぶしておく。自身の体験談を入れると、信ぴょう性が増す。
というのが良いのではないだろうか。
また、報告書の提出を、「出張の翌日朝にさせる」というのもアリである。
これは私がそうだったのだが、魅力的なセミナーがあっても、報告書を作成するのが面倒で、希望しなかったことがある。翌日の朝には提出せよ、と言われていたからだ。
実際は提出しなくてもお咎めはなかったが、これを厳守させると、面倒がって、外部との接触回数を減らせるかもしれない。
あとは、「取引先の失敗談」を吹き込むのもアリかもしれない。
隣の芝生は青く見えるもので、「自分のいる会社はクソ、取引先の会社は素晴らしい」となることは多いが、実際は、そう綺麗ごとではすまないことも、多々あるはずである。
経営者なら、その辺のあら探し、情報入手はしやすいので、使えそうなネタを手に入れたら、会議や、社長室に呼んで、その辺のことを、刷り込みすると良いだろう。
さて、色々書いたが、いうまでもなく、人材流出を防ぐために、外部との接触を断つ、という思考をもった時点で、その会社は負けである。
しかし、田舎の中小企業というのは、理屈ではない。
泥にまみれようと、世間様から後ろ指さされようと、最悪を回避するためなら、手段など選んでいられない、という経営者は沢山いるだろう。
そんな時、この駄文が少しでも参考になれば幸いである。