後任探しを任されることになった

会社やめるまでの軌跡

仕事を辞める時、誰もが心配するのは、「はたして後任が見つかるだろうか?」ということである。

勿論、後任を探すのは会社の仕事であり、見つからなければ、それは会社の責任である。辞める人間は、そんなことをを気にする必要は全くない。後任が現れなければ、ただ辞めるだけの話だ。

中小企業の常とはいえ、一人抜けたら業務が回らなくなる、という属人体制を、分かっていながら続けた責は、会社、ひいては社長に全ての責任がある。残念ながら、期限までに後任が見つけられなくても、社会それを「甘え」と言うだろう。

とはいえ・・・、である。

それでも気になってしまうのが人間というもの。

私は退職届を出した次の日には、自身の仕事内容、および、後任にはどのようなスキル、および、資質の人間が必要か、まとめて上長に提出した。元々、準備していたので、実にスムーズだった。

厳密にいえば、退職届を出した時は、社長には拒否されたのだが、

あの後、次期社長のジュニア君とは話がついており、私の退職は3か月後、確定事項になったはずだった。

しかしである。

1週間たっても、2週間たっても、会社に後任を探す動きは見られない。

私が知らないだけで、水面下で動いているなら、問題はないのだが・・・。残念なことに、それもなさそうなのだ。

WEB担当者の引継ぎを探すのなんて、こんな田舎ではかなり大変なのは分かっているだろうに(というか、県内では無理だと思っているが)

なぜ、1日も早く動かないのかと、ヤキモキし、ただ時間だけがすぎていった。

ところがある日、事態は急展開する。

今まで、まるで退職届のことなどなかったかのように動かなかった社長が、暴走を始めた。

とある役員を呼び出し、私の後任を探すよう指示を出した。私の直属の上司や、ジュニア君には、一言も相談せずである。

私の退職自体知らなかった役員は寝耳に水。(というか、それくらい共有しとこうよ・・・)

しかし、「社長を喜ばせることだけが仕事」と言い切る忠犬役員は、社長の指示を受け、すぐに、動き始めた。

当然、私や、直属の上司には、何もヒアリングせず。

ちなみに、その役員は、WEB担当者の仕事内容を全く理解していない。せいぜい、「ホームページの仕事をしている」くらいだ。

そして、何をするかと思えば、ウチと取引のあった地元のWEB関連会社に電話し、社員の引き抜きを迫ったのである。当然、私が退職することも全て話してしまった。

まだ、社内でも、トップクラスの人間しか知らないのに、先に取引先に暴露するとは・・・。

これからも良好な関係を続けてもらうために、どのような流れで説明しようか、色々考えていたのだが、全てオジャンになってしまった。

なお、当然、WEB会社は拒否した。ただでさえデジタル人材が足りないのに、ブラックと分かっているウチに社員を差し出す会社がいると思っているのだろうか。

だが、残念ながら、ウチは一事が万事、この調子なのだ。

交渉する時、「自分が何をしたいか」しか考えない。相手側の都合、相手にとって、メリットはどこにあるか?、という視点がない。

取引先なんて、仕事を受ける立場なんだから、こちらの言うことを聞いて当たり前、とさえ考えている。バブルの頃から、自身の時を止めてしまった人たちばかりなのだ。

結局、その役員は、他に頼るツテもなく、撃沈。

事態を知った直属の上司とジュニア君がストップをかけ、緊急会議が開かれた。

そして、結論として、

東京の大手会社に長年勤め、人脈のあるジュニア君と、WEB関係の会社とつながりの深い私の2名が中心となり、後任を探すことになった。

自分で、自分の後任を探すのって普通なのだろうか・・・。いや、既にアテがあるなら分かるが、私もアテなどない。しかも辞める人間に丸投げしてくるとは。非常に難度の高いミッションだ。

田舎の中小企業で、薄給でWEB担当やって欲しいといっても、普通は来ないだろう。

とはいえ、やってみないと分からない。私も、見つからなければそのまま辞めるだけだし、特にプレッシャーはない。何事も経験だ。

おそらくUターン希望者以外は望み薄だと思うが、中には都会育ちでも、デジタルな毎日に疲れ、田舎暮らしに憧れをもってるような、奇特な人もいるかもしれない。

それでも、ウチを選ぶべきではないと思うが。

とりあえず今月は下調べをして、本格的に動くのは来月からか。

果たして1か月で後任を見つけることができるのか。不安は尽きない。