上司は「自分より立派な人間」、という思いこみを捨てる

人生観・仕事観

私がもし、20代の頃の自分に何かアドバイスをするとしたら、それは職場において、先輩や上司という存在は、絶対的なものでも、ましてや、別に「立派な人間」でもない、というのを教えるだろう。

誤解をされぬよう補足するが、尊敬すべき対象がいたら、それは素直に尊敬し、見習うべきである。

だがそれは、年長者だとか、役職が上だとか、経験がある、とか、一切関係ない。別に、後輩だろうと、新参だろうと、自分が尊敬すべきと感じたら、どんどんリスペクトすればよい。そこに「肩書」を考える必要はない。そういう話である。

なぜ急にこんなことを言い出すかいうと、退職活動を進めるにつれ、改めて強く感じたからである。田舎の中小企業というのは、尊敬すべき人間が非常に少ない世界だということを。

ウチの会社は社員が100人ほどいるが、私が尊敬すると思う人物は、そのうち、一人だけだ。直接の女性上司である。その人物も、もう退職するのでゼロになる。(私も辞めるので、もう関係ないが…)

だが、社外には、私が尊敬する人間が大勢いる。そのほとんどが、東京の会社か、その第一線で働いたのちにUターンした人たちだ。

ひとことで言えば、「見ている世界の広さ」が違う。

田舎の中小企業、しかも明確なビジョンもなく、同族のなれ合い経営を続ける会社に、たとえ何十年勤めたようと、大した経験は身につかない。それは、14年ほど勤めた私自身がよく分かっている。

そこで醸成されるのは、本来、そんな苦労してなくても解決できる問題を、わざわざ独自の裏技的やり方で、無理に解決する手法。よそから見れば、「ただめんどくさいスキル」が醸成されるだけである。なお、そのスキルの市場価値は、ないに等しい。

少し乱暴かもしれないが、田舎の中小企業におけるベテラン上司とは、ゲームでいえば、最初の町の周辺だけでずっとレベル上げしている冒険者のようものである。

そのパーティの中では頼れる存在かもしれない。だが、もっと強い敵のエリアで、レベル上げした人からすれば、「ただ物理でなぐればよい」と思えるような敵も、「まず一発当てたら防御してその次は~」みたいな、面倒なことをして、よし倒した!という自己満足に浸っている人、そういう風にしか見えない部分があるのは、否定できないと思う。

もちろん、今後も世界が平和であり続けるなら、一生、スライム狩りよろしく、自分の分かる世界だけで、日銭を稼ぐという人生もありだろう。

だが、これからはAIの拡大や、国際競争の激化により、労働環境は大きく変わる。

今まで中小企業でずっと働いてきたが、正直、今の40代~50代で、その先までしっかり考えている人は、とても少ない。というか、そういう人は、転職か独立していると思う。

そして、田舎の中小企業の場合、今後、ずっとレベル上げしてこなかった地方の冒険者が、会社の中枢を担うことになる。考えただけで、ぞっとする。

改めて、まとめると、私が20代の自分に何か進言するとしたら、

会社の上司、先輩という存在を、尊敬の対象としてみるのではなく、あくまで、その人物を尊敬できるか、で学ぶこと。

そして、明らかに地方の冒険者レベルの人たちしかいないと感じたら、数年のうちに、スキルを独学で身に着け、転職か独立を勧める。

身も蓋もないが、そういう話である。