健康食品ビジネスで、リスクゼロはどだい無理な話

食と健康

度重なる規制強化で、増大する健康食品ビジネスのリスク

こんにちは、さぼてんです。20年近く、田舎の中小企業でWEB担当をしてきました。中でも、健康食品の通販業務が専門でした。

その中で、退職するまで(まだしてませんが)、社長や役員に何度言っても、理解してもらえなかったのが、

「健康食品ビジネスで、リスクゼロはどだい無理」という事実です。

そもそもどんなビジネスでも、リスクゼロはありえないと思うのですが、健康食品ビジネスはその中でも、かなり訴訟、行政処分にあうリスクが高いです。

昔からそうでしょ?と思う方は、甘いです。

昔は、法律なんてガン無視で、いいかげんな健康食品を扱っている業者ばかり摘発されていたのです。

今は違います。

現在は、誰でも知ってるような有名な会社でも、よく広告表現が問題で、消費者庁から改善指導を受けて、ニュースになってますよね?

ああいう大手は、基本的に、社内の法務部や、お付きの弁護士が、きちんとリーガルチェックした上で、宣伝活動行っているんです。

にも拘わらず、このような事態になるのは、

それだけ健康食品の宣伝方法が、度重なる規制強化で高度化し、さらに解釈次第で、白にも黒にもなるようなケースが増加してしまったためです。

改善効果を「連想」させたらアウト

トクホ、機能性表示など、一部例外はありますが、 基本的に健康食品は、効果効能をうたってはいけません。

これは多くの方が知っていますが、一体どのくらい厳しい基準か、というのは、あまり知られていません。

結論からいえば、「改善効果を連想させたら」アウトです。よく誤解されますが、本当か嘘かは関係ありません。

健康食品については、薬事三法とよばれる「薬機法」「景表法」「健康増進法」で、おおよそ表現できる範囲が定まっています。あとは、一部のガイドラインですね。YahooやGoogleでも、それぞれの自主基準があります。

ユーザーボイス(お客様の体験談)で引っ掛かることが多いので、その例でいきましょう。

例えば、以下のような表現はNGです。

  • ①朝、パッと起きられます
  • ②この年で、いつも体力をほめてもらえます

1は、商品を利用することで、「朝起きられない症状が改善した」と連想させます。よってアウトです。

2は、商品を利用することで、「通常想定されるレベルより体力が高まった」と連想させます。なのでアウトです。

じゃあ、どういえばいいの?となりますが、以下のような表現ならOKです。

  • ①いつも早起きで、毎日継続できています
  • ②昔から元気がとりえですが、今もそれが続いています

重要なのは、以前の状態が続いてる=改善ではない、というロジックです。

ようするに、イーブンの状態から、プラスに持っていくという表現をしたらダメという事です。

あくまで、イーブンのままであれば、「健康維持」という事で通ります。

「維持」はOK、「増強、改善」はNG。これは健康食品の宣伝における基本原則です。

10年前の手法、建前はもう通じない時代

ですが、「維持」を求めて高い健康食品を買う人はいません。基本的に、マイナスをプラスにしたり、極端な話、病気の改善や予防のために、高いお金を払って購入するのです。

なので、どこもグレーゾーンや、ギリギリの表現をするようになります。

これが、健康食品でリスクゼロは無理、という結論です。

確かに、10年ほど前まで、大手の広告代理店が、あの手、この手を考えて、

なるほど!うまい表現をしてるな!と感心するような広告テクニックも多く使われていました。

また、宣伝用に子会社やNPO法人を立ち上げて、「ウチとは関係ない所が勝手にやってるだけ」というスタンスで、宣伝する手法も流行りました。

しかしこれもサン・クロレラ事件から、変わりました。たとえ別団体でも、訴訟が起きれば、元の宣伝費がどこから出ているか、団体の光熱費はどこから出てるか、まで調べられ、客観的な判断が行われます。

建前は通じない世の中になったのです。

これからの健康食品ビジネスには、矛盾とリスクの許容が重要

これから高齢化はますます進み、健康食品の需要も一定以上、続いていくでしょう。

しかし経営者は、健康食品ビジネスは、非常に高リスクであるということを、今後しっかり理解すべきです。

ちなみにウチの社長は、今回のブログで書いたようなことを、1/10も理解できていません。

ほかの役員も、対して変わらないレベルです。

なので、宣伝、マーケティング部との意識差は広がるばかりです。

提案するたびに、「それは大丈夫なのか?リスクはないのか?」と聞かれます。

だから「リスクはあります」よ。何回も言わせるなといいたい。

トクホや機能性表示でも、少し表現を間違えれば、消費者庁の指導でニュースになるんですよ。ましてや、ただの健康食品なんて、どんなやり方でやってもリスクはあります。

仮に広告は、完全にホワイトで出したとしましょう。

でも、電話窓口でも、そのレベルの対応を一貫して出来るか、と言われたら、それは無理です。録音されたら、絶対アラが出ます。

効果を「連想」さえさせない対話で、商品買った人に説明できますか?

そのぐらい健康食品ビジネスとは、矛盾を抱えた、難儀な商品です。

これから健康食品を始める起業家や経営者は、その辺、しっかり覚悟して、挑みましょう!