最終出社日は、居酒屋へ一人飲みにいくより、好きなものを食べに行った方が良い。

会社やめるまでの軌跡

先程、14年勤めた会社の最終出社を終えた。

普段、冷血漢を気取っている私も、会う度にかけられる温かい言葉に、何度か目頭が熱くなった。明日には消える儚い気持ちだろうが、悪くない。そう思う。

さて、そこから送別会で涙の別れ、というのが一般的な流れかもしれないが、そうではなく、私は今、一人でステーキを食べている。

そもそも、最終退社日に送別会って一般的なのだろうか。わざわざ人に聞かないので、知らないが、私は過去2回とも、最終出社日は挨拶したらそのまま別れた。送別会はその前か、その後だ。

今回も、この先、数回の送別会を予定していただいている。ありがたい。決して私がぼっちだから、一人でステーキを食べに来ているわけではないのだ。断じて。

おそらく誘う方も、最終日当日は、家族や恋人と、予定があるのではないか、と気を効かせてくれたかのだろう。そうに違いない。

あいにく、私にその予定はないが、その心遣いが痛み入る。涙が出そうだ。なぜだろう。

さて、以上の理由により、最終出社日にアローンとなった私だが、一応、その場合の予定は立てていた。

①居酒屋で一人飲み

②好きなものを食べに行く(田舎なので、車で酒は飲めない)

さてどうしようか、しばらく悩んだ結果、②の好きなものを食べにいくことにした。ついでに肉マイレージも貯めれば合理的だろうと、いきなりステーキに立ち寄ったわけである。

ただ、②を選んだのは、①をやるべきでないと思った理由があるからだ。

それは、最終出社日に一人で酒を飲みに行くと、「酒と開放感に踊らされ、マスターに余計なことを言いそう」だと、危機感を覚えたからである。

私は自分でいうのもなんだが、社内でここだけの話、という機密情報をかなり聞かされる程度には、口は堅いと信頼を得ているつもりである。

しかし、それは、あくまで関係のある人間に対してだ。

人は、家族や、一見関係ないと思われる人間に対しては、重い口を開いてしまうものだ。

しかも居酒屋のマスターというのは、聞き上手のプロ。

ほろ酔い気分の時に、「どうしたいあんた。今日はなんかあったのかい」なぞ、優しい言葉をかけられたら、ちょろい私は、つい会社に対しての毒を言いかねない。

これが田舎という狭いコミュニティでは致命傷になりうる。

一応、私がいるのは、会社から車で30分は離れた隣の市なのだが、正直、田舎のネットワークにいては、車で30分圏内など、あってないようなもの。

決して油断してはならない。せめて、退社して一年、私のことを会社もだいぶ忘れたころまで、そういったトークは控えるのが賢明だろう。

長々とつまらない話をしたが、とりあえず、自分にちょっとでも自信がない人は、最終出社日、一人で酒を飲みに行くよりは、好きなものを食べに行った方がいい。

自ら、門出を汚すことはない。

もう自由であれば、飲みなど、その後、いくらでもできるのだから。

さて、明日からは完全に自由の身。新しいスタートが始まる。

楽しみで仕方ない。

最終出社日の夜は、ステーキを平らげたあと、一人グラスを傾け、テニスの全米オープン録画を見ながら、ブログを書く。

それも自分らしいな、と思った一日だった。