「特典泥棒」という謎ワードが、ウチの社員の一部で、使われている。
今なら定期購入を申し込んだ人に、〇〇をプレゼント!
通販の広告などでよくみるセールストークだ。ウチの会社も通販をしているので、多分に漏れず、同じような文句がうたってある。
しかし、定期購入を申し込んでも、1回でさっさと辞める人がいる。当然、特典は差し上げたままなので、戻ってこない。
このようなユーザーの事を、一部社員が、「特典泥棒」と呼んで蔑んでいる。
私にはこの感覚が長年、よく分からなかった。
勿論、定期購入を申し込んでもらった以上、1日でも長く続けて欲しいというのは、社員として当然の願いだ。
だが、規定にうたってない以上、1回で辞めようが、10回で辞めようが、それは客の勝手である。
それを逃がさないために、一部の会社は、「申し込んだら、最初の3ヶ月は解約できません」などの縛りを設けているのだ。
もっとも、この手法は、最近敬遠されがちで、国からも目を付けられている。但し書きが目立つようにかいておらず、申し込んでから気づくユーザーが後を絶たないからだ。
まぁそれは余談として、問題は、ルールに全く違反していないのに、お客様をずるい、ましてや、泥棒などと呼ぶその精神である。個人的に、あまり好ましいものではない。
お客様を特典泥棒と「思う人」と「思わない人」。その違いは、何だろうか。
もしかしたら違うかもしれないが、自分の中である程度、腑に落ちた結論がある。
おそらく、お客様を「特典泥棒」と呼ぶのは、「感情で仕事をしている人たち」なのだ。
感情で仕事をしている人達は、会社にとっての利益やイメージプラスではなく、自分にとって、気持ちいいか、そうでないか。その物差しで全てを考える。
勿論、自分が気持ちよくできることが一番だ。だが、仕事とは不条理なもの。そうでないケースもたびたびある。
それでも、誰かの利益につながるなら、と頑張れるのが、良い仕事である。給料をもらっている以上、それが会社であっても良いはずだ。
だが、感情で仕事をする人たちは、自分の中で決められたルールを逸脱して、誰かが得をすることを許せないのだ。だから、泥棒などと、下の人間を見るように揶揄して、自分の中の正義感を納得させるのである。
実にくだらない。
私はそんなものは犬でも食わせておけばよいと思うが、最近はそういう例えを使うと、愛犬家に怒られそうなので、控えておく。むしろ、低所得層よりいいもの食べてるしね。最近の犬。
また、ぶっちゃけていうと、ビジネス的な視点でいえば、1回で辞める人がいようと、いまいと、あまり関係ないのである。
定期購入(サブスクリプション型)の商売は、基本、LTV(総購入金額)で利益の回収を考える。
簡単言えば、定期購入の継続回数が、平均10回で、1回の購入額が1000円だとする。
となると、定期1人当たりのLTVは1000×10=10000円となる。これを元に利益回収できる仕組みで、ビジネスを運用するのである。
なので、1回でやめる人が、いようがいまいが、それは織り込み済みで計算されているので、利益には影響ないのだ。
私はこういう基本を分かってないから、お客様を泥棒呼ばわりするのだろうと思い、一度、説明したのだが、「それとこれとは別問題」と言われた。
それで分かったのである。これが「感情で仕事をする人達」の思考なのだと。
言葉を飾らずにいえば、私個人としては、私生活はともかく、仕事に感情を持ち込む人達とは、あまり一緒に仕事をしたくはない。価値観が違いすぎる。自分にとってもプラスにならない。
一言でいえば、アホくさい。
フリーランスという生き方を目指すようになったのも、この事が影響しているように思う。
と改めて感じた夜であった。