社長秘書を、全てAIがやる時代はいつか

会社やめるまでの軌跡

東京五輪のチケット予約申し込み始まる

今日も素晴らしい一日が終わった。

具体的には、いつものように社長からの勅命が下り、

数時間、東京五輪のチケット販売サイトと格闘していた。

戦火はない。

某漫画風にいえば、

「何の成果も、得られませんでした・・・っ!」

という奴である。

もっとも、私もバカではない。10年以上、社長と付き合っているので、

今日の指令も予測済みだった。

前日までにID登録までは済まし、先着順ではないことも確認済み。

当日サーバーが飛んでも、そのことを説明すれば良いだろう、と考えていたが、

残念ながら、ハチミツよりも甘い見通しだった。

午前9時、社長室からの内線で、それは始まる。

「そういえば言ってなかったが」

余談だが、社長のこの枕詞は、テンプレの一つだ。

この出だしで始まるのは大体悪夢と、相場が決まっている。

「東京五輪の開会式チケットを5人分、申し込んでおいてくれ」

「分かりました。ただ、サーバーが飛ぶ可能性があるので、本日中は難しいかもしれません」

「わかった」

そして、10時に申し込み開始。

想像通り、ろくに調べもしない、社長のようなせっかちばかりだ。

公式サイトのサーバーは5秒で根を上げ、「混雑中です」と閉店状態。

日本人どれだけヒマなんですかと、愚痴の一つも言いたくなるが、

この青空の下、私のように心を左手で潰しながら、ポチポチ、申し込みボタンを連打している社畜もいるだろうと、振り上げた手を収める。

繋がらないサーバー。しかし、社長は無慈悲に告げる

しばらくF5で試してみたが、やはりサーバーは死んでるようだ。ろくにつながらない。

「どうだった?」と、社長。

「やはりダメですね」

「先着順ではなく、5/28までに申し込めば大丈夫ですから。おそらくこんな事態も初日だけでしょう」

予定通りのセリフを持ち出す。

しかし、ボスはお気に召さなかったようである。

「万が一があるだろう」

「今日中にやっておくにこしたことはない」

分かるようで分からない、いつもの謎理論を持ち出す。

確かに、明日、北朝鮮のミサイルが降ってくるような事態でも起きれば、

チケットの販売はなくなるかもしれない。

その場合、五輪どころではなくなるだろうが。

もっとも社長の場合、国の未来よりも、五輪の方が大事だと、真顔でいいそうなので、怖くて聞けない。

「はい。分かりました」

このような場合、もう一度、正論で説き伏せようとするのは、正しくない。

10年以上付き合って、学んだ。

それで、納得してもらえたことなど、ただの一度もありはしないし、

下手をすれば、変なスイッチが入り、

「では、一時間以内にチケットをとれ」

などと言いかねない。

理屈ではないのだ。

こんな時は思考を停止し、社長の指示を無慈悲に実行するマシーンとなるのが最良である。

社長秘書を代行してくれる、汎用型AIの早期開発が望まれる

もっとも、私はあと半年もしない内に退職するので、大分、心が楽になった。

失礼を承知で申し上げるなら、

「子供の我儘に付き合う保母さん」の心境に近い。

私の後釜も大変だとは思うが、

たとえ親友の暗殺を命じられても、涙を流しながらサクっと実行できるほどの胆力の持ち主に継いで欲しいものである。

まぁそれは現実性に欠けるので、これ以上、犠牲を出さないためにも

早いうちに、社長秘書が代行できるほどの汎用型AIが開発されることを祈るばかりだ。

余談であるが、個人的に東京オリンピックに殆ど興味はないが、 (TVで良い派)

テニスだけは見てみたい。(錦織ファン)

こっそり自分の分だけ、夜に申し込んだのは、内緒である。