意外と女性中心に広まる可能性もあるかもしれない
今日もわが部署からは、女性たちの楽しい笑い声が響いていた。結構なことである。
それが仕事とは全く関係のない、福山雅治が離婚するだの、しないだのという単なるゴシップであったことや、就業時間真っただ中であったことなどは、ささいな問題である。
ましてや、一人、プログラムを書いていた私の思考がかき消されたことなど、とるに足らない。
しかし、いつも思うが、自分の人生に全く交差することのない、人の家庭のあれこれを、あそこまで真剣に議論できるのは、正直尊敬に値する。ぜひ、その熱量の1%を、目の前の仕事に注ぎ込んでもらいたい。
さて、なぜこの話題になったかといえば、女性の熱い議論に触発され、思い出したことがあるからだ。VR技術についてである。
VRに興味がある、といえば、女性よりも、男性の方が圧倒的に多い印象だ。一般の方は、観光施設や、アミューズメントパーク、既に一部ビジネスで使われている、というイメージが強いだろう。
しかし、利用している人からすれば、「50%がゲームで、49%がアレな目的」といって、差支えない。
なので、今後も男性中心に普及が進むと思っていたが、BLや芸能人との仮想生活、などをコンテンツにしたら、(本人や、まっとうなファンからの反対が強そうだが)、意外と女性中心で広がる可能性もあるかもしれない、と思った次第である。
一度でも体験したら分かる。VRの感動。
私も、当初は全く関心がなかったのだが、2年程前、取引先のフリーランスの方が、VRを利用した町おこしに参加していると聞き、興味をもった。
思い立ったらすぐ行動するのが、自分の数少ない長所。次の日には、PS4とPSVRを注文していた。
ただ、PSVRは当時品薄が続いており、早朝、Amazonに登録されても、毎回数分で売り切れていた。私はいつも悔し涙を流し、無駄な早起きでイライラしながら、仕事にとりかかっていたものである。
その後、運よくPSVRを手に入れた私は、早速何本かソフトを試した。サメが襲ってくる奴や、バイオハザードなどの有名どころだ。そして、VRのあまりの凄さに打ち震えた。
「これもうゲーセンいらないじゃん・・・」
「これもう映画館いらないじゃん・・・」
など、普段、ゲーセンにも映画館にもいかない男が、感動に頬を濡らしたのを覚えている。
それからというもの、会う人、会う人に、
「VRすごいよ」
「まじですごいよ」
と喧伝し、めったに人を入れなかった自室へ客を招き、
「鑑賞会」と称した布教活動を行っていたほどである。
しかし、それから2年が過ぎた私の部屋に、PSVRはない。
VRが一般層へ中々普及しない理由
何故か。
VR機器を一度でも所有した人なら、分かると思う。
理由は、「コンテンツがあまりにも未成熟」であること。
そして、「人はすぐ感動に慣れる」という事だ。
ほかにも疲労感、酔い、イニシャルコストの高さなど、様々な問題があるが、キリがないので、この2つに絞りたいと思う。
むろん、今でもPSVRやPCVRで、ゲームに熱中している人がいることは知っている。
だが、それは言葉を選ばずにいえば、一部のゲームオタクに受けているだけであり、その中でも、新技術の黎明期に触れている喜びを、ガジェットとしての楽しさに内部変換している人が、少なくないと感じた。
VRは確かに凄い。だがあくまで「ゲームとして凄い」であり、そのことに「へえ凄いね」以外の感想をもたないユーザには、まだ価値ある体験を与えるほど、コンテンツが成長していない。あったとしても、目にするまでのハードルが高すぎるのである。
残念ながら、現在では普通に、映画館やLIVEに行って、SNSで「めっちゃ良かった!」とつぶやく方が、手軽で楽しめる文化であり、リアルを排除したVRは、それとは逆行する舞台装置であるという事だ。
一般の人へ裾野が広がるには、まだかなり時間がかかるだろう。
それでも、VRの未来は明るい
私も最初は、初めて目の前に広がる、仮想現実の魅力にとりつかれていた。
しかし、やがて私の中で、仮想現実はただの「現実」になり、アレな女性は、よく知るプロの女優に舞い戻った。これは決して賢者の血がそうさせたわけではない。
この世で限りないものを一つ挙げろと言われれば、それはやはり、人の欲望なのだろう。
金持ちが、いくら儲けても金が足らないと嘆くように、未知の感動を与えてくれたPSVRも、1年も経たず、私の中で、「どこか満たされないもの」に変わってしまったのだ。
とはいえ、アラフォーの田舎のおっさんが心配することなど、世の偉い方々はとうに解決の道を見つけているはずである。
あせることはない。日本の未来は明るいはずだ。
そうつぶやき、今日も私は、1年前から傍らにいる相棒、
OculusGoのスイッチを入れるのだった。
は?今月新型が出る?冗談ですよね?