働き方改革というなら、有給申請書から、理由欄をまず排除しよう、という話

人生観・仕事観

前職時代のことである。

新人から、有給申請書の「理由欄」になんて書けばいいか分からない、と相談された。

私は必要ない、と答えた。

一応、部長と総務にも話した。

彼らの決断は、「必要ないけど、一応、理由は書いてくれ」だった。

私はこの時、あっ、この会社ダメだな、と改めて思った。

そんな話である。

ことの発端は、1年程前。

長年、一人WEB担としてやっていた私のもとに、新人がやってきた。

私はウキウキで、こーだぞー、あーだぞー、と指導していた。

彼はどちらかといえば、コード周りのことを勉強していた人間だったが、アナリティクスや、行動分析ツールで、ユーザーの裏側が見れることに興味を示し、楽しんでいるようだった。

うんうん、分かる。中二ごころが刺激されるよね。^^

そこから、ただの興味本位でなく、企業の売上につなげていく「分析」には長い道のりがあるが、しっかり教えていくぞー。

そう思っていた。

しかし、ある日の朝。

悩ましい顔をした彼から、相談したいことがある、と話しかけられた。

私は、「おう、いいぞ。じゃあ会議室いこうか」

と先輩風をふかし、平静を装っていたが、内心は、汗だくだった。

まさか・・・辞めたい?そんな・・・。俺の指導がどこかダメだったのか・・・。

見た目では分からんからな・・・・。困ったぞ・・・。

そんな私をよそに、彼は席についてそうそう、こう切り出した。

「有給申請書ってあるじゃないですか」

「ん?お、おう」

やった!そういうことか!書き方が分からなかっただけなんだな。もうこいつは~。

と安堵していた私に、

「理由の欄をどうかけばいいか分からなくて」

と恥ずかしそうにつぶやいた。

私は、天を仰いだ。

そういうことか・・・。

立派な社畜だった私は、有給を使ったことが殆どなかった。

なので、申請書の書式など、細かい内容は覚えてなかったが、そこに理由欄があったことは覚えていた。

当然、彼が何故悩んでいるかというと、本当にどうやって書けばいいか分からないのではなく、

単に遊びで休みたいだけなので、

・そこに正直に書いていいのか

・それとも「私用」などと濁した方がいいのか

・適当な理由。つまり「嘘」を書いた方がいいのか

ということである。

おそらく、ネットで、「有給申請書 理由 書き方」などを、必死で検索したのだろう。

聞いてはこないが、何となく、「法的には理由を書く必要がない」ことまで、調べている感じだった。

私は、「必要ない」と答えた。彼は安心した様子だった。

私はむしろ、新入社員にこんな無駄な精神負荷をかけた、「理由欄」を憎々しく思った。まだ、こんなものが存在しているのか。

有給消化を国が推進しているというのに。

会社も嫌々とはいえ、働き方改革の流れに従うなら、こういう所から手を付けないとダメだろ、と。

とはいえ、有給申請書には、私の承認だけでなく、部長と、総務の承認も必要だ。

なので、その二つには、私から話をしておく、と伝え、相談は終わった。

その足で、部長と、総務に話した。

彼らは「まぁ確かに、法的には必要ないね」という認識で一致していた。

なら話は終わりだな、と思った瞬間、

「でも、一応、理由はかいてもらってよ」

ときた。

は?

多分、私が怪訝な表情をしたのが伝わったのだろう。

少し気色ばんだ様子で、

「一応、他部署にもみんな書いてもらっているから」

と。

いや理由になってない。

続けて、

「別に理由を書くぐらいなら、〇〇君も大丈夫でしょ?適当でいいので」

大丈夫じゃないから相談して来たんだが?適当でいいなら、猶更いらないだろ。

なら、「私用のため」でいいですか、と聞いた所、

「んー私用はダメ。そういうルールなので。他の適当な理由で」

ときたもんだ。

多分、この時、私は相当、呆れた面をしていたに違いない。

そして、最後に

「しかし、最近の若い子は融通が利かないね~。最初から適当な理由で出してくればいいのに」

と締めくくった。

私はこの時、ホントこの会社終わってるなと思った。

必要ないなら、なくせばいい。それによって、ストレスを感じる社員がいるのなら、なおのこと。

有給に理由を書け、なんて、法律どころか、就業規則にも書かれていない(そもそも書いてあったら違法)。つまり、ただの会社都合でしかない。

極めつけ、その責任を、新人に押し付けるだと?

言っては何だが、あなた方が考える程度のことは、新人もそれなりに調べているよ。

そのうえで、確信がもてないことは、相談してきてるのではないか。

何もかもが、適当で通った時代とは違うんですよ?

それをルールを整備する側が認識しなくてどうする?

結果、5分ほど討論した末、理解してもらうのは諦め、

私は新人君に、「申し訳ない。ダメだった。〇〇のような理由で、一応、書いて欲しい」と伝えた。

彼は、そんなもんですよね~と笑っていた。

そして、彼は3か月後に退職した。

そのことが理由だったとは思わないが、彼が色々と悩んで決めた中での、ほんの一要素にはなったかもしれない。

真実は分からないけど、私は悔しかった。

あれから、1年近く。例の申請書はどうなっただろうか。

おそらく変わってないだろう。

そして、新人がやめていく。見つからない、と変わらず嘆いているに違いない。

確かに、全体的な原因として、今、新人の獲得、定着は大変だ。

だが、離職率の高い会社は、こういった些細なことで、新入社員に精神負荷をかけていないか、一度、見直した方がいいのでは、と思う。

労働時間の削減ばかりで、そんな、働き方改革が見落とされているのではないか。そんな気がする。

では。